あの「車椅子社長」を支えた女性はこんな人だった。体が強いほうではなかったのに、結婚してからは風邪ひとつ引かなくなった理由。

春山 由子

── やはりお子さんが小さいときがいちばんたいへんでしたか?

春山 ええ、次男が生まれた頃がいちばんたいへんでした。毎晩3人を風呂に入れるので2時間。自分より重い人を車椅子から担いで浴槽に入れるのってたいへんなんですよ。その後主人がスライドイン・バスという、湯船の上まで椅子がスライドする入浴装置を開発したおかげでだいぶ楽になりましたが。それからみんなを寝かせてから家事ですからね。

── その頃から由子さんは会社も手伝うようになったんですね。

春山 ええ、会社で使途不明金が見つかったので、私が経理を担当することになったんです。そのうえ主人はその頃から自分で寝返りが打てない状態になりましたから、夜は夜で数時間おきの寝返りのたびに起こされる。その意味でその後10年くらいしてから主人が寝返りベッドの開発に成功したときはうれしかった。あれで寝返りの手伝いから解放されましたから。あれは主人の執念でしたね。
 とにかく毎朝寝不足のまま、クルマを運転して子どもを保育所に預けてから出勤という日々でした。当時会社は大阪ミナミにあって、箕面の自宅からは渋滞の阪神高速を使って1時間半くらいかかったんです。何度渋滞の中、居眠りしかけてうしろのクルマからクラクションを鳴らされたことか。いま考えてもよく事故に遭わなかったと思います。

── しかもそれがずっと続く。

春山 でも不思議なのは、人間ってそんな状況にも慣れるんですね。それを身をもって体験しました。自分で言うのもなんですが人間ってすごい(笑)。
 あと、人間というのは危機感によって眠っていた能力がONになるんじゃないかというのは主人が言っていましたね。たとえば病気になったあとの主人の記憶力というのもたいしたものでした。メモが取れない分、頭の中に引き出しをつくって、そこに情報を関連づけてインプットしていたみたいです。これも眠っていた能力が危機感でONになったんだと思います。

── そういう意味では満さんも病気になって、ある能力がOFFからONになったように、由子さんが風邪をひかなくなったということも危機感でOFFからONになったということかもしれないですね。

春山 そうかもしれません。本当に人間っていくらでも変われるんだと思います。

春山由子 『仲が良かったのは、難病のおかげ』

四六判ソフトカバー 定価1300円(税別)

春山満氏と公私ともに彼をサポートし続けてきた妻・由子氏の出会いから亡くなるまでの四十数年間を綴った。日常、懸命にがんばっているすべての人に贈る、生きる喜びと愛に満ちた感動の記録。櫻井よしこさん 推薦「春山満さんはあらゆる意味で非凡な人生を駆け抜けた。本書はお二人のその疾走が大変でありながら、どれ程面白く、楽しく、そして輝きに満ちていたかを教えてくれる。『楽しかったなあ、由子』という春山さんの声も天上からきこえてくるような気がする」

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