日本の死因第1位はガンじゃない!? 産婦人科実録コミック『透明なゆりかご』作者・沖田×華インタビュー

「母性」はあって当然か

---新刊のテーマの1つとして「母性」があるかと思います。ネグレクトや子供へのDVを繰り返す母親が登場しますが、沖田さんは母性についてどのようのお考えですか?

わたしの母性のイメージは、アップダウンがあって、強まったりと弱まったりするものという感じです。子供を産んだ瞬間から右肩上がりに強まっていくものでもなければ、子供の成長とともに弱まっていくものでもない。ゆらいでいてとても不安定な印象です。

妊娠するとホルモンの関係で母親は子供との幸福な未来を妄想したりするそうです。作中に登場する、不妊治療の末に授かった子供を他人の子供と取り替えようとした母親も、赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみにしていました。服をつくってあげたりしてとても幸せそうにしていたんです。

けれど生まれた子供を見て、彼女は「ハズレだ」と口にしました。「もっとかわいい子が生まれるはずだった」「この子は将来何もかもうまくいかない」と。わたしにはこの方を「ひどい人だ」と決めつけることはできませんでした。ただ、母性が暴走してしまったのだと。

---「母性とは不思議なものだ」ともおっしゃっていますよね。

そもそも母性自体が良いものだという考えには疑問を抱いていました。母性が悪くはたらいてしまうこともあるのではないかと。たとえば子供への過度の期待や愛情といったものですね。わたし自身手探りで描いているので、答えには至っていません。個人差が大きいですし、ひとまとめにして定義するのは乱暴な気がしています。一概に言えるものではないなと。

また、自分にはそもそも"母性がない"と感じている女性も少なからずいるんですよ。産んだはいいけど子供がかわいくない。それがネグレクトにつながったりする場合もあるのですが、大体のお母さんは口にしません。一人で抱え込み、母親失格だと思ってしまっているのではないでしょうか。

---子供のいない女性でも、「自分には母性が備わっていないのでは」と感じている人がいると聞いたことがあります。

実はわたしもそうです。長年連れ添ったパートナーがいますが、彼の子供を欲しいと思ったことは一度もありません。子供も苦手です。昔からそうでしたし、これからも変わらないと思っています。同じような人がいるときいて、正直とホッとしました。

タイトルにこめた思い

---『透明なゆりかご』というタイトルは沖田さんがつけたのですか?

当初のメインテーマが「中絶」だったので、存在していたのに"ないことにされた命"をあつかうというイメージがありました。存在が透けているような不安定感、不透明感を出したいと思いました。"透明"はクリアーなものではなくて、ぼんやりした存在感をあらわしています。

---最後に読者の方へメッセージをお願いします。

産婦人科でバイトをしていた期間はとても短かったですが、ふつうなら目にすることがない世界に触れることができました。とても貴重な経験だったと思っています。わたしが産婦人科で見たもの、聞いたこと、感じたことをこれからも描いていきたいです。

取材・構成:松澤夏織

沖田×華 (おきた・ばっか)
1979年、富山県生まれ。高校卒業後、看護学校に通い、22歳まで看護師として病院に勤務。その後、風俗嬢になって富山、金沢、名古屋で働く。2008年、『こんなアホでも幸せになりたい』(マガジン・マガジン)でマンガ家として単行本デビュー。

著者= 沖田×華
透明なゆりかご
(講談社、税込み463円)
生まれる命、消えゆく命、その重さは違うのだろうか---全てが作者の体験に基づく新実の産婦人科医院物語!

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