『「衝動」に支配される世界---我慢しない消費者が社会を食いつくす』衝動をコントロールする為に

現代では技術もこうした傾向をサポートする。たとえばビッグデータの活用で、特にアメリカでの選挙運動は大きく変わりつつある。所有する車、購読雑誌、ニュースの入手先、飲酒頻度と様々な頻度から政治問題、投票行動についての市民の反応を予測する。その結果何が起こるのかといえば、政治家はまだ投票先を決めかねているその人の心を最も投票へ促すとデータで示されたことを言うようになる。政策の実質的な意味とは無関係にだ。

じゃあどうしたらいいのか

衝動を支配する仕組みによって社会の歪みは日に日に大きくなっている。もちろん、こうした事態に対してなんの対策も打たれてこなかったわけではない。効率だけでなく、社会的なコストまでを指標に取り組んで、総体的に持続可能な社会をつくるというコンセプトは何十年も前から繰り返し論じられてきた。二酸化炭素排出に税金を結びつける=二酸化炭素の排出をより高価なものにするなど、温暖化対策をはじめとする環境問題についてはそれが進んでいる分野の一つだろう。

制度的には一時的な効率から距離をとって、長期的な持続可能性と利益に目を向けさせることが重要だ。たとえばアメリカの組織レベルの話では、雇用コストの安い外国へ仕事を発注し、移民の受け入れを邁進する典型的な「短期的なコスト面での効率」を求めることが多い。一方インドなどの開発途上国では社内大学を設置してトレーニングされた人材を業界内で増やす社内大学方式が一般的になっているという。長期的には業界内で豊かなスキルを持った人材が増え、自社の利益になると企業が認識しているのだ。

一方、個人できることで最も簡単なのは単純に「距離を取る」ということだろう。TwitterやFacebookが断続的に情報を更新して集中力をそぐのであれば、スマートフォンの電源を切る、アプリを削除してしまえばいい。ただアルコール中毒の人間に「お酒から距離をとりましょう」と言っているようなもので、大して効果がないような気もする。 これについても新しい動きは、常にある。各種SNSのチェックはAppleWatchの登場などによって今度は集中力をあまり使わない形で確認が容易になっていくかもしれない。一時的な衝動に行動をコントロールされないような技術に対向する技術が今後は発展していく可能性は充分にある。

本書は悲観的な話が多いが、世界を見渡してみると抵抗運動は各所で起こっている。そうそう悲観するものではないんじゃないかと、個人的には思ったりもする。「今後どうすればいいのか」という結論についてはまだまだこれから試行錯誤していかなければいけない部分だが、どのような歴史を辿って今のような状況に辿り着いたのかを概観して問題提起をしてくれる、懐の深い一冊だ。

『「衝動」に支配される世界---我慢しない消費者が社会を食いつくす

作者:ポール・ロバーツ/神保 哲生 解説
出版社:ダイヤモンド社

内容紹介
欲しい物が、当たり前にすぐ手に入る―、そんな「豊かさ」の代償とは?私たちの「底なしの欲望」を取り込んで繁栄してきた社会経済システム。しかし、自己の欲求を満たすことを何よりも優先する社会には、もはや破滅への道しか残されていない!圧巻の取材力で、「知られざる現実」を解き明かす問題作。

『ノンフィクションはこれを読め! 2014』HONZが選んだ100冊
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
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