『気候カジノ』気候変動を経済学から考える

私たちはどちらの道を選ぶべきなのだろうか。高所得国である日本に住んでいる人々の中には、経済成長をするべきでないと考える環境保護至上主義者もいるだろうが、そういった考えは高所得国住人の特権だ。飢餓で明日の食料にも困っている人々に対して「経済成長を諦めろ」という権利は私たちにはない。事実、経済成長まっただ中にいる中国やインドは1997年の京都議定書の枠組みにも参加しなかった。

このような状況に対し、炭素価格の引き上げなどの経済メカニズムを導入することによって、「気候変動の抑制は比較的安いコストで達成することができる」のだという。気候変動抑制の目標は、厳しすぎても(産業化以前からの伸びを1℃に抑える)、緩すぎても(産業化以前と比較して6℃の温暖化を許容する)、前者は経済成長への負担によって、後者は温暖化による被害によって、私たちは莫大なコストを背負うことになる。

本書によれば経済成長をストップすることなく、将来的な温暖化の被害を最小に留められる温度目標は、産業化以前との比較で2.3℃とのことだ。そしてその目標を達成する方法は、二酸化炭素に価格を付けて、費用の最小化を経済メカニズムに委ねることとなる。方法は大きく分けて二つあり、一つは排出権取引(キャップ・アンド・トレード)、もう一つは炭素税を課すことだが、どちらの手段をとってもその効用は等しい。

いずれの場合でも製造や流通の過程で二酸化炭素を多く消費する商品の価格が高くなり、私たち消費者が自然とそういった商品を敬遠することによって結果的に二酸化炭素の排出量が抑えられる。もちろんその過程で技術革新も促進されるだろう。

これらと比較すると、政府が低エネルギー製品に補助金を支給するようなやり方は極めて効率が悪い。炭素税か排出権取引いずれかの方法において二酸化炭素を1トン削減するのに必要な費用が12ドルであるのに対し、省エネルギー住宅支援減税を通じた削減費用は255ドル/トンもかかる。似たような政策だと最近ならエコポイントなどが思い浮かぶが、これもやはり極めて効率の悪い方法のようだ。

著者は経済学者であるため、経済的な手法で気候変動を解決しようとするためのポジショントークが含まれている可能性は否定できない。それでも、ヒステリックな「脱成長」論やその反対の懐疑論が横行しがちなこの領域において、気候変動を経済問題として位置づけ、現実的に対応可能な最適解を探すという本書のアプローチは、頭に入れておいて損はないだろう。

『気候カジノ

作者:ウィリアム・ノードハウス 翻訳:藤﨑香里
出版社:日経BP社

内容紹介
さらなる経済成長と地球温暖化の防止は両立できる。米国経済学の権威W.ノードハウスによる進まない温暖化対策への緊急提言

『ノンフィクションはこれを読め! 2014』HONZが選んだ100冊
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
内容紹介:キルギスの誘拐婚から現代宇宙論まで、嫌われる勇気からヤクザなキリスト教史まで、世界の"今"を紐解く、ブックガイド!ノンフィクション書評サイトHONZ厳選の100冊。

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