真のプロには心を動かす力がある
読売ジャイアンツは、川上哲治監督の時代から竹園を宿舎として利用している。梅田さんが料理長を務めていた間、多くの名将が、選手たちが、竹園の味の虜になっていった。
「昔はジャイアンツの選手は、甲子園遠征の時は外でおちおち食事もできなかったんですよ。だから外に出なくてもいいように、いろんな種類の料理を準備させていただいて、選手たちが飽きない工夫をしていました」
遠征とはいっても、選手たちにとっては“日常”。だから、高級料理を出しても意味がない。それに、スポーツ選手だからといってスタミナ料理だけが必要なわけではない。負けたときには食が進まないこともある。
そんな考えのもと、選手たちが勝敗に関わらずほっと一息つける料理を工夫して提供しつづけた。長嶋茂雄氏が愛した通称「梅ちゃん餃子」、選手たちを魅了した「あまから炒め」は、料理長を引退した今でも当時の選手たちから「もう一度食べたい」とリクエストされることがある自慢のメニューだ。
巨人対阪神の伝統の一戦は、監督や選手にとっても特に力が入るもの。そんな戦場でジャイアンツナインたちの癒しとなったのは、梅田さんの“心遣い”と“野球愛”がふんだんに詰まった料理だった。
梅田さんにとって生涯憧れの存在である長嶋茂雄氏は、料理長引退を機に上梓した梅田さんの本に、「どの世界であれ、真のプロには心を動かす力があるんですね、梅ちゃん」とメッセージを寄せている。
