芦屋駅前に佇む「ホテル竹園芦屋」は、予てから甲子園出場校やプロ野球チームが利用する老舗の宿舎である。

「竹園といえば食事、食事といえば竹園」と選手たち絶賛の料理を手掛けていたのが、2009年に料理長を引退した梅田茂雄さんだ。
梅田さんの45年の“現役生活”において、選手たちに食事を用意するときに心掛けていたことはなんだったのか。プロ野球レジェンドたちとの思い出話も交えながら語っていただいた。
すべては恋に落ちたことがきっかけ
実は梅田さんご本人も高校球児として甲子園出場時に前身の「竹園旅館」に泊まっていた。そこで恋に落ちたのが、球児たちのマドンナ的存在だった旅館の娘・多美子さん。
高校時代は叶わぬ恋だったが、卒業後に再会。それをきっかけに今度は多美子さんの旦那さんとして竹園に戻った。
「本当は出身地の神奈川でお好み焼き屋でもやるために数年修行しようと思っていただけなんだけど、野球部仕込みの体力と若さを買われたのか、先代の女将さんに見込まれてそのまま居座ることになっちゃって(笑)」
全国各地から甲子園出場を果たしてやってくる球児たちに、「お母さんの味を食べさせてあげたい」と思ったのは、自分自身が球児だったからこそ。
「遠征に行くと、だいたいカレー・焼きそば・チャーハンのローテーションでしょう。それじゃ子供たちは飽きるからね。関東出身の子には、ところてんとか納豆なんかも食べさせてあげたかったんですよ」と梅田さん。
栄養面を考慮することも当然大事だが、それ以前にまず「おいしいもの」「子供たちが喜ぶもの」の提供をいつでも心掛けていたという。