カーリットホールディングス・出口和男社長「社員全員が『同じことをしていてもいつか通用しなくなる』と意識すれば、会社が変わっていくエネルギーになる」

入社式 今年の入社式。女性と外国人を積極的に採用した。演壇で、入社した社員に話をする

心技体

企業には健全な心があってこそ、よりよい成果が生まれると考えています。私は'08年から2年ほど、弊社内にある飲料をボトルに詰める事業の経営を担当していました。しかし冬は(飲料の需要が減って)利益が出にくく、しかも私が経営に携わる前に事故を起こしており、事業は赤字続き。私が再生のため考えた最初の一手は、私自身も加わって工場内のゴミ拾いをすることでした。

次に5S(整理、整頓、清掃、清潔、上記を習慣化する躾)を徹底し、例えば床にゴミが目立つ色の塗料を塗る、電灯のワット数を上げて(事故の元となる)陰になる場所をなくすなど、改善点を社員に挙げてもらった。同時に、生産効率化のための施策を募集すると次々提案があって、良い案を採用していくと利益が出始めた。利益が出たので、当然、給与も上げました。効率化も、高い技術力も、モチベーションも、根本は健全な心から生まれる。

創造性

趣味は絵画や工芸作品を見ることです。どの作家が好き、というより「昨日と違った絵を描こう」という意思が見える作品が好きです。事業でも「変化ありき」の世界観って大切で、「今までこうしてきた」はどうでもいいんです。思えば私は新人の頃から先輩に「オマエの仕事はこれだ」と言われると、すぐ「ならどう変えようか?」と考える人間でした。生意気にもほどがありますが、競争が激しい世代なりに生き抜く知恵だったのでしょう。今も、社員全員が「同じことをしていてもいつか通用しなくなる」と意識してくれれば、それが会社が変わっていくエネルギーになるのだと思っています。

健康体

私はこの年齢になって白髪がなく、髪もふさふさしているので、よく「若さの秘訣は?」と聞かれます。ただし、この質問は嫌いなんです。毎日顔を洗う時は頭も洗って(毛根や頭皮を)刺激する、必ずフェイスクリームをつける、ゴルフ場に行くとフェイスケアのコスメはすべて試してみるなど、努力をしていることを知られたくない(笑)。ちなみにたばこは吸いませんが、お酒はガンガン飲み、食事も、人から「よく食べるなぁ」と感心されるほどよく食べます。

命の限り

私は常に、地球誕生から46億年のカレンダーを意識しています。46億年前に地球が誕生し、35億年前に生物が生まれ、400万年前に人類の祖先が生まれ……というカレンダーがあるとします。これを1年とすれば、ここ2000年の出来事など、最後の数秒の出来事に過ぎません。でも、我々の祖先が命の限りに、よりよく変わろうとしてきたから今の我々がある。これは経営も同じです。弊社も、例えば(爆薬の原料をつくる際に必要な)電気分解の技術は、電池自動車の電池の効率化に役立ちますし、爆薬と同様にロケットの推進薬も製造しており、グローバル、さらにその向こうにあるコズミックへと活躍の場を広げていく予定です。

私は、自分が息をしているうちに、少しでも多くのことを成し遂げたい。

(取材・文/夏目幸明)
『週刊現代』2015年5月2日号より

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日本一、社長の取材をしている記者・夏目幸明の編集後記

同社は、飲料をボトルに詰める事業も行っているが、ここで使われる電力は自社所有の水力発電所からの供給でまかなわれているとか。「明治のセメント王」・浅野総一郎の事業がいまだ価値を持っていることには驚きを感じる。起業を考える若者は、もしかしたら、自分が起業するビジネスの寿命がいかほどであるか、何が起きた時に寿命を終えるかなどを考えて置いたほうがよいのかもしれない。


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