「最近、都内の不動産を買いたがる中国人が増えています。彼らのための不動産ツアーも盛んに組まれ、都心のタワーマンションの何億円もする物件が飛ぶように売れている。
彼らの大半はキャッシュで支払ってくれる上に、決断も早いから、不動産業者にとっては非常にありがたい存在です」(株式会社東京不動産の繆英長氏)
東京、大阪、名古屋といった大都市圏では、中国人をはじめとする外国人による日本の不動産の「爆買い」が盛んだ。都内の不動産業者が語る。
「昨年6月にオープンした虎ノ門ヒルズの住宅も、その大半が外国人に買われましたが、夜になっても真っ暗なんです。実は彼らはそこに住んでいるわけではない。ほとんどが投資目的で、売り抜けるタイミングをひたすら待っているのです」
海外からの不動産投資マネーの日本への流入は、とどまるところを知らない。
都市未来総合研究所によると、昨年の海外法人による不動産取得額は9777億円で、過去最大だった。
彼らにとって日本の不動産の何が魅力なのか。オフィス野中代表取締役で住宅コンサルタントの野中清志氏が解説する。
「外国人から見れば、日本の不動産はいわば『バーゲンセール』の状態です。安倍政権発足前に1ドル=80円だった為替は、1ドル=120円と円安が進んでいる。
これは単純計算すると、以前は1億円のマンションを買うのに125万ドル必要だったのが、いまはたったの83万ドルで買えてしまうということで、日本の不動産は世界中から割安に見られているのです」
みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏は、円安に加えて、他国の不動産事情も大きく影響していると言う。
「いま世界では、安心して不動産投資ができる国があまりないんです。欧州は債務問題があり、アメリカは景気の先行きが不透明。またインドなどの新興途上国にしても、インフラ整備が進んでいないため、不動産投資には不向きと思われている。
そんな中で、安定した収入が見込める日本の不動産が、有力な投資先として浮上しているのです」
世界中から日本の不動産へ約1兆円もの投資マネーが流れている上に、最近は日本人の間でも都心の不動産需要が高まっている。前出の野中氏が語る。
「不動産会社が主催するセミナーには、都心のマンションを買いたいという日本人が大勢来ます。中でも独身の女性でマンションを買う人が増えている。
昔であれば、女性がマンションを買えば『あの人は結婚をあきらめた』と周囲に噂されましたが、いまはまったく違う。
彼女たちはちゃんと結婚した後のことも考えています。結婚後は新たに夫と買ったマンションに住み、それまで住んでいたマンションは賃貸にして活用する。彼女たちははじめから、有力な資産としてマンションを買っているんです」