【物件選びの知恵001】 アベノミクスの死角。新築過剰と空き家増大で、ますます「エリア」と「建物」の見極めが重要に

長嶋修(不動産コンサルタント)

 ドイツの空き家率は1%前後

空き家増加の原因は大きく2つ。一つは「人口・世帯数減少」。たとえこれから出生率が劇的に改善しても、それが住宅市場に効いてくるのは30年以上先の話になる。移民を受け入れるといっても、我が国の急激な人口減少分など到底まかなえないだろう。

もう一つはズバリ「新築の造り過ぎ」である。

実は、OECD加盟国のほぼすべての国が「住宅総量目安」や「住宅供給目標」といった指標を持っている。世帯数の現状と見通し、住宅数とその質がおよそ把握できるため、5年、10年の間にどのくらい新築を造ればよいかといった目安を立て、それに合わせて、予算や税制、金融をコントロールする。

その結果我が国の空き家率13.5%に対し、イギリスの空き家率は3~4%、ドイツの空き家率は1%前後である。

日本はこうした目安が一切なく、「景気を冷やしてはいけない」という1点を目的に新築住宅促進政策がこれまで過剰に行われてきた、というのが実態だ。更に昨今ではアベノミクス成功のため、新築住宅購入促進を目的として「住宅ローン控除」といった税金還付や「住まい給付金」といったバラマキ策、さらには時限立法にも関わらず40年以上続けている「固定資産税減免」といった優遇策によって、新築建設促進には更に拍車がかかっている。

住宅数の全体計画がなければ、今後団塊世代が徐々に消えていく中で空き家の大幅増加は必至。現在820万戸の空き家数が2020年には900万戸へ、2025年には「空き家ついに1,000万戸へ」といった文字が踊っても全く不思議ではない。

しかし国は今のところ「住宅数の管理」を行うつもりはないようだ。

社会資本整備審議会住宅宅地分科会(国交省)において、今後の住宅市場に関し、「住生活基本計画の見直し」といった非常に重要な議論が行われているが、ここにおける議論に、筆者は強い懸念を持っている。というのも、4月21日開催された第一回分科会において配布された一枚のペーパー、「住生活基本計画(全国計画)の見直しにあたっての論点(案)」には、「住宅の数量管理」について一切触れられていない。

実はかつては日本にも「住宅供給量の目安」があった。戦後の高度成長期で深刻な住宅難のなか、1966年に「住宅建設計画法 」が施行、5年ごとの住宅供給目標が建てられた。ところが、2006年に同法が廃止された際に「量の目標」もなくなってしまう。