小泉堯史&上田正治 第3回
「黒澤さんはいつも『ぼくは芸術家と呼ばれるよりも職人と呼ばれたい』と言っていました」

島地 勝彦 プロフィール

小泉 黒澤さんはきっと「あなたは白紙で来てください。色はわたしがつけますから」って気持ちだったんでしょう。しかしそう言われてもね。俳優さんは俳優さんなりにいろいろ思ったり考えたりして来られるわけですよ。だから多分、『影武者』のときの勝新太郎さんは、自分でいろいろやりたい人ですから、あのようなことになったんでしょうね。

立木 勝さんがもっと素直な人だったら、ホントに面白かったといまでもおれは思うね。勝さんは普段のようにちゃらんぽらんでよかったのに、黒澤さんの映画だからってああなっちゃったんだろうね。

シマジ あの勝さんが気負って真剣になってしまったんだ。

上田 そういうことでしょうね。

立木 あの人は結構子供っぽいもんね。だけど、出来ることなら、なんとか誰かに説得してもらいたかったねえ。

上田 もしも勝さんの『影武者』が実現していたら、そりゃあ面白かったと思いますよ。

立木 そんなことを言うと仲代さんがいけないみたいになるけど、いや、そうじゃないんだよね。そういうことではまったくないんだ。

小泉 立木先輩が言おうとしていることはよくわかります。そうじゃないと仲代さんに怒られてしまいますが、それでも勝さんの『影武者』は観てみたかった。

〈次回につづく〉

 

小泉堯史 (こいずみ・たかし) 1944年、茨城県生まれ。水戸一高から東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ進み、その後、早稲田大学文学部演劇専攻卒。早大の卒論研究で『赤ひげ』『七人の侍』などの名作と出合ったことから、黒澤明監督に師事。黒澤作品の助監督を務めたほか、私的な助手としても黒澤を28年間にわたって支え続けた。2000年、黒澤の遺作脚本を映画化した『雨あがる』で監督デビュー。同作でヴェネツィア国際映画祭の緑の獅子賞、日本アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門で受賞した。他の作品に『阿弥陀堂だより』『博士の愛した数式』『明日への遺言』『蜩ノ記』がある。
上田正治 (うえだ・しょうじ) 1938年、千葉県生まれ。1956年に東宝入社。撮影助手を経て1971年に技師昇格。1983年からフリー。黒澤明監督の『影武者』『』『』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』で撮影を担当。日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した『雨あがる』をはじめ、『阿弥陀堂だより』『博士の愛した数式』『明日への遺言』『蜩ノ記』と、黒澤明監督に師事した小泉堯史監督作の撮影はすべて手がけている。イギリスアカデミー賞撮影賞、日本アカデミー賞最優秀撮影賞、毎日映画コンクール撮影賞、Asian Perspective Award(バンコク国際映画祭)、シラキュース インターナショナル・フィルム・フェスティバル撮影賞など受賞歴多数。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンティックな愚か者』(いずれも講談社)『Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『お洒落極道』(小学館)が好評発売中!

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