【沿線革命037】 山手線事故、3時間で運転再開できた!?


阿部等(交通コンサルタント)

復旧工事の内容

ここからは、やりようによっては短時間で運転再開できるとの説明なので、全員にお読み願いたい。

運転中止としていた10時間近くの間に行われた作業は以下である。
 ①引留装置を副5-1号から新副3号に変更
 ②傾いていた副5-1号を重機により垂直に立ち上げ
 ③副5-1号を安定させるため新副6-1号と新副7号に支線を設置
 ④倒れた副6-1号を撤去、一部は線路に支障しないよう存置

京浜東北線北行は、いずれの作業にも関係ない。あとは京浜東北線南行の線路を使用できるようになれば、併用運転により山手線・京浜東北線とも最低限の運行を確保できる。最低限とは言え、各5分おきには運行できるので、土曜の運行としては大きな支障はない。

京浜東北線南行は、①と④の作業は関係ない。副5-1号は京浜東北線南行の東側に建つ柱とセットの門型となっているので、②と③が終了するまでは京浜東北線南行の線路を使用できない。

翌日に現地を見たら傾いていたので、垂直にすべく作業はしたができなかったのだろう。引留装置は撤去され、架線から引かれる力はなくなっているので、②はせず③さえ済めば、京浜東北線南行の線路は使用できた。

それほど大掛かりな作業でなく、10時間近くなど要さない。そもそも、当日の復旧作業着手は10:22で、事故発生の6:10頃から4時間以上を要している。並行道路もない、関係者も近くに住んでいない山奥ならまだしも、都会のど真ん中で4時間以上は掛かり過ぎだ。

今後、利用者・社会・経営への影響を最少化するため、JR東日本が、事故発生後の運転再開を、万全な形でなくとも少しでも早くするように方針変更するなら、3時間程度で運転再開できるようになるはずだ。

社会の鉄道への見方

「方針変更」とは奇異に感ずるだろう。事故時に早期に運転再開するよう最善の努力をするのは当然のことで、現状はそうでないの?と思われるだろう。

現状は残念ながら、早期に運転再開することが重視されていないと言わざるを得ない。JR東日本を非難して言っているのではなく、社会の鉄道への見方や期待の裏返しだ。

今回の事故に関して、この記事の公開時点で、テレビ5(生1+録画4)+新聞1+雑誌1+ネットメディア1の取材を受けた。テレビは1つの取材を複数の番組で使うので、10近くの番組で放送されたようだ。個別具体の全ての番組は本人にも伝えられない。

取材の中で共通に聞かれるのは、事故の原因と再発の心配である。そして、【036】に書いた「運行可能な区間を定時運行できないのか?」「もっと早くに運転再開できないのか?」とは一切聞かれない。

外部の人間がとやかく言わずとも、事故の原因はJR東日本がいずれは発表するし、再発防止もJR東日本は真剣に取り組むに決まっている。

私はむしろ、運行可能な区間の定時運行と早期の運転再開こそ、マスコミは大きく取り上げるべきだと考えている。利用者の希望も強いはずだ。

ところが、マスコミの皆さんはあまり関心を持たない。鉄道にひたすら安全ばかりを求め、効率性も利便性も経済性も求めない。3時間での運転再開など、どのマスコミも求めない。

そして、「JR東日本は安全を軽視する企業体質ではないですか?」「同種の事故が繰り返されるのではないですか?」という質問を多数受ける。それに対し、YESという回答が期待されているのを承知で、私はNOと回答し以下のように説明する。

「鉄道の安全は、事故の教訓を糧に高められてきました。今回のように予見できなかった事例は、一度でも起きると経験として蓄積され、関係者に教訓として広まる土壌が鉄道業界にはあります。再発防止は着実に図られると信じています」