2015.04.03

大阪市民の「知る権利」 ~市長は「協定書」を正しく説明せよ~
文/京都大学大学院教授 藤井聡

佐々木氏は大阪市顧問就任以前には、藤井と一部同様の主張もしていた

以上に加えて、もう一つ追記しておくべきことがあります。それは、佐々木氏はご自身の原稿の中では触れておられませんが、(少なくともこれら原稿が出版された時点では)「大阪市の特別顧問」のお立場であった、という事実です。したがって、「都構想」を推進しようとする大阪市の方針に「反する意見」をお持ちであった場合、その意見を表明することを控える可能性があったという点は、読者の皆様にも是非ご理解いただきたいと思います。無論、それは可能性に過ぎませんが、公正な読者判断を期するためにも、そうした事実は開示しておくことが、適当ではないかと筆者は考えます。

実際、佐々木氏が大阪市特別顧問に就任する以前に出版した『東京都政』という書籍の中で、驚くべきことに(筆者は、大変に驚きました)、今、藤井が「7つの事実」で論じた内容と、論理的には全くといっていい程に同じ主張をしておられたのです。

「各区を大都市地域にふさわしい新しいタイプの基礎的な自治体として自立させる方向が、区の地方自治にとっては望ましい。(中略)一つは二十三区を八つぐらいに再編し、それぞれを100万程度の政令指定都市にする方向が考えられる」

これはまさに佐々木氏が否定した、筆者の「事実6:東京23区の人々は、『東京市』が無いせいで『損』をしている」の方向とまさに同じ議論です。なぜなら当方の主張も佐々木氏のこの主張も共に、「都区制度をやめて政令指定都市制度に『自立』させる方が、区の地方自治にとって望ましい=区民にとって得である」という話だからです(注3)。

ところがこの「大阪都構想」の話においては、どういうわけか自著に書いた説とは逆方向の、現大阪市が推進しようとする『自立』(佐々木氏の上記書籍から引用)している「政令指定都市」を廃止し、その『自立』をやめさせた上でわざわざ都区制度に変えていくことを推奨しているのです。

もちろん、大阪市が大きすぎるから100万程度の政令指定都市を複数つくるのがいいのだ等、いくらでも尤もらしい再反論をすることはできると思われますが、かつて佐々木氏は、筆者の事実6の議論と大いに重なり合う議論をしていたにも拘わらず、大阪市特別顧問に就任中に執筆したご自身の原稿ではこの事実6に対して「いったい、どういう論拠と文脈でそう言えるのか」と激しく批判されたのは、事実です。

この事実だけは、ここに指摘しておきつつ、読者各位には、筆者と佐々木氏の原稿の双方を公正にご判断いただくことを祈念いたしたいと思います(なお、この件については、当方のHPにてより詳しく論じています。ご関心の方は是非ご参照ください。http://satoshi-fujii.com/150402-2/)。

(注3)自治体の人口規模は異なりますが、方向としては同じです。筆者が一つ自治体としての東京市という概念を用いたのは、わかりやすさの便宜のためにそうしたにすぎません。東京○○市という政令指定都市を8つ作るという前提で事実6を論じても、その事実6において指摘しようとしたその本質は何ら変わることはありません。

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