いま、シビックテック普及に必要な考え方---地道な対話を通じて「公共」や「コミュニティ」を共通言語にするということ

佐藤 慶一 プロフィール

「オープンガバメントを推進するには、市民参加と対話の仕組みが必要」

Code for Japan代表・関治之氏

オープニングセッションに登場したのは、一般社団法人Code for Japan代表の関治之氏。テーマは「シビックテックは何をもたらすのか『オープンソース文化とシビックテックがもたらす共創社会』」というもの。4年前の東日本大震災発生当時、「シビックテックという言葉自体知らなかった」という関氏は、この災害において「技術者はショックを受けた」と述べた。なぜか。

それはインターネットがないと、なにもできないという現実があったからだ。なにか動こうにしても情報がない、もしくは正しい情報が整理されていないという状況が目の前にあった。震災から4時間後、「OpenStreetMap」メンバーの東修作氏が復興支援プラットフォーム「sinsai.info」を立ち上げ、関氏が運用を担った。ツイッターなどから被災・支援情報をまとめ、地図上に表示。立ち上げ1ヵ月で100万PV、これまでに掲載されたレポートは1万2000をレポートを超える。このスピード感を実現したのは、ウシャヒディ(Ushahidi)というオープンソースのソフトウェアを活用したことにある。この延長線上にシビックテックがある、とオープンソースの考え方を関氏は紹介した。

「クリエイターがアイデアをアプリケーションというかたちにする。それを別のクリエイターがカスタマイズして機能追加や改変などフィードバックする。さらに別のクリエイターが利用して別のアプリケーションをつくってフィードバックする。アイデアをベースにしたコミュニティが生まれ、ソリューションと試行錯誤が共有知化される」(関氏)

このようなことを体現しているものとしては、だれでもマップをつくることができるツールの「OpenStreetMap」やオープンソースのWebサーバソフトウェア「APACHE」などを例に挙げた。では、シビックテックという言葉はなにを意味するのか。関氏は「市民による、市民のためのテクノロジー活用」と定義する。要するに「行政に不平不満を言うのではなく、いっしょに手を動かすこと」だ。一部のクラウドファンディングやソーシャルメディア活用、コミュニティオーガナイジング、政府データの活用などさまざまな分野のサービスが含まれる。

日本ではまだ「シビックテック」という言葉はそれほど知られていないが、海外では市場としても盛り上がりを見せている。関連企業は2000年に16社、2013年には121社を数える。最近ではY combinatorや500 Startupsなどのベンチャーキャピタルやインキュベーターも投資をはじめていると関氏は紹介。また、Code for Japanがパートナーを組むCode for Americaの2014年の収入は1163万ドル(約13億円)で、半分以上が財団からの助成金で成り立っているという。

シビックテックが盛り上がることと切り離せないのは、オープンガバメント(政府や行政のオープン化)という考え方。2009年1月にオバマ大統領が「Open Government Initiative」という覚書を発表した。さらに2009年5月に「Open Government Initiative」を出し、Transparency(透明性)、Participation(国民参加)、Collaboration(政府間及び官民の連携・協業)の3原則を強調。そして、政府データを公開するポータルサイト「Data.gov」をオープンした。

「積極的な情報公開やデータドリブンな意思決定、プロセスの見える化することではじめて、国民の行政プロセスへの参加を促すことができ、行政によるオープンデータ活用も進む。そして組織の枠を超えた協力体制が生まれる。テクノロジー活用やアイデアが出ることで市民コミュニティが進化し、行政とのコミュニケーションも変わってくることがポイント。つまり、テクノロジー活用によって、市民が選挙以外にも行政プロセスに参加することができ、行政側も市民と活動に参加することができる。オープンガバメントを推進していくには、市民参加と対話の仕組みが必要」(関氏)