「グノシー上場」徹底分析! 予想PERは異次元の5241倍、適正な株式流動性、個人投資家の大きな関与が効いた稀有なケース

田中 博文 プロフィール
〔PHOTO〕gettyimages

業績見込みの精査をさらにしっかり行う必要がある

ところで、昨年12月にIPOした、モバイルオンラインゲームの開発・運営及び配信を行っているgumi(グミ)が、3月5日に大きく業績下方修正を行ったり、今年1月に約30億円の銀行融資を受けていたこと、3月27日には、従業員の希望退職を発表するなど、大きく混乱を極め、IPOマーケットに対する不信感が募りつつあります。

今回のことはすべて適時開示(タイムリーディスクロージャー)と言われ、上場会社は投資家に対して平等、正確、適時に行うことが求められており、上場審査の過程でその社内体制が構築されているかのチェックが行われます。仮に虚偽記載の場合は刑事罰や損害賠償の対象となります。

そういった意味では、適時開示の社内体制を審査する主幹事証券である野村は、gumiに対する業績予想の精緻さについて、第1四半期の業績だけで上場させるのではなく、もっとギリギリまで、その業績進捗を確認する必要があったと考えています。

特にgumiは直接東証一部に上場したケースであり、直接東証一部に上場できる形式基準は、「最近2年間の連結経常利益の合計が5億円以上」、または「上場時の株式時価総額が250億円以上」なのですが、業績下方修正を行った上場申請期も赤字だったとなると、当初の時価総額946億円どころか、形式基準の250億円がバリュエーションとして算定されたか疑問のところです。仮に250億円がつかなければ、3期連続赤字であるため、もう一つの基準である、「最近2年間の連結経常利益の合計が5億円以上」にも該当しないことになり、そもそも東証本則市場(一部、二部市場)上場への形式要件が整っていなかったことになります。

会社の業績見込みが甘いのは大前提として、曲がりなりにも東証一部であり、外国人、機関投資家に対してトウキョウマーケットの上場審査の未熟さを露呈したことを鑑みると、野村だけでなく東証審査にも甘さがあったのは否めないと思われます。

図3. Gunosyの業績推移

話をGunosyに戻しますが、今期業績見込みは、すでに第3四半期まで開示されており、第2四半期累計で、約3億円の経常赤字であったのが、第3四半期単独では約2億円の黒字転換、そして第4四半期単独では約1億円の経常黒字を見込んでいます。

gumiは第1四半期実績のみで上場したわけですが、Gunosyは第3四半期実績まで確認しているのは評価できるところです。ただし第4四半期の経常利益が500万円下振れしてしまうだけで、通期で赤字になってしまうため、その進捗管理には注意が必要になります。

***

従来より、上場審査は審査基準を緩和すると不祥事まがいのことが起き、審査基準が厳格化されてきました。その結果、新規上場件数が減少し、証券市場が活性化しなくなるため、再び審査基準を緩和、そしてまた不祥事が起き再度審査を厳格化する・・・という流れを繰り返しています。

ここに来て、メガベンチャーの上場が相次ぎますが、それ自体はとても喜ばしいことだと思います。しかし、大きな時価総額で登場する企業だからこそ、しっかりとした社内体制構築が必要で、投資家に対して大きな責任を負うというのも然りでしょう。

また、小さなVC並みの投資資金を保有したエンジェルが日本に誕生しつつあることも、シードステージの資本政策を多様化させる上で、非常に有効でしょうし、嬉しいことです。今年もしっかりと審査された、新規上場の会社がその後も業績も伸ばし、これからの日本を代表する企業になっていくことを願ってやみません。 

田中博文(たなか・ひろふみ)
明治大学法学部卒。あさひ銀行(現りそな銀行)で法人営業。その後キュービーネット(QBハウス)の執行役員経営企画室長として、経営全般、IPO業務に従事。2004年、みずほ証券にて公開引受業務に従事し、主担当者としてIPO実績多数。その後日系証券投資銀行部門M&Aチームヘッドとして活躍。2010年、PEファンド、ジェイ・キャピタル・パートナーズを設立し、代表取締役社長に就任。JCP1号ファンドを運用中。グロービスMBA。1級FP技能士。


 ★ 読みやすい会員専用のレイアウト
 ★ 会員だけが読める特別記事やコンテンツ
 ★ セミナーやイベントへのご招待・優待サービス
 ★ アーカイブ記事が読み放題
 ★ 印刷してじっくりよめる最適なレイアウト・・・などさまざまな会員特典あり

▼お申込みはこちら
 http://gendai.ismedia.jp/list/premium