「グノシー上場」徹底分析! 予想PERは異次元の5241倍、適正な株式流動性、個人投資家の大きな関与が効いた稀有なケース

田中 博文 プロフィール
木村新司氏(個人投資家/元グノシー共同代表)〔PHOTO〕gettyimages

個人投資家(エンジェル)の大きな関与が効いている稀有なケース

ベンチャー企業がその事業を成長させていくにあたり、外部の資本が必要な場合があるわけですが、一般的にはベンチャーキャピタル(VC)がその役割を担っているのは、ご存知の通りです。ただし、Gunosyの資本政策を見てみると極めてエンジェルの役割が効いていることが分かります。

図1. Gunosyの資本政策

Gunosyは当初資本金15万円で設立されました(有価証券届出書55ページ)。そして設立から3ヵ月後の2013年2月に木村新司氏を中心とした個人投資家(エンジェル)から、約3,000万円の出資を受けています。また、同時に創業マネジメントの福島氏、吉田氏、関氏から375株を3,000万円で買い取り(同123ページ)、同年5月にはやはりエンジェルと思われる青木直子氏と共にさらに5,000万円を出資しました(同55ページ)。この時点で木村氏は1億円超を出資していたと思われます。

図2. 第三者割当増資金額と、プレマネー*ベースの株式時価総額推移

第三者割当増資の金額とその時のプレマネーベースの株式時価総額推移を見ていきましょう。

Gunosyは最初の決算期である2013年5月までに約9,000万円の出資を受けていますが、通常、このシードマネーをベンチャーキャピタル(VC)が出資することはなかなか難しく、会社の成長戦略に支障をきたす場合が少なくありません。ただし、今回の場合は、2013年7月にジャフコ等のVCが3億5,000万円の出資を行うまでの間、木村氏を中心としたエンジェルが見事にそのブリッジの役割を果たしています。しかもVC等が出資する段階でのプレマネー株式時価総額はすでに24億5,600万円までに成長していました。

*プレマネー株式時価総額
未上場企業が資金調達をする以前の株式価値のこと。この場合は発行価格×今回の資金調達直前の発行済株式数。ポストマネー株式時価総額とは、資金調達後の株式価値であり、発行価格×今回の資金調達後の発行済株式数。

さらに驚くべきことは、この木村氏、なんと2014年5月期には3億円をGunosyに融資しています(同101ページ)。新たにVCから資金調達するまでのつなぎ資金だったと思われます(当期中にすでに返済済み)。要は木村氏はピークでは、約4億円を出資もしくは融資しており、エンジェルとはいえ、一個人としてはかなりの金額であると思われます。

webで調べた限りでは、木村氏は東京大学物理学部物理学科卒業後、ドリームインキュベータに勤務後、2007年にアトランティスというweb広告関連の会社を創業し、2011年にグリーに約22億円で会社を売却。その後Gunosy含む数社への投資を行っており、おそらくその投資資金はこの会社売却時の資金の一部であると思われます。木村氏は2013年にGunosyの共同代表に就任し、その後のベンチャーキャピタル等からの資金調達を中心に仕事を行って来ましたが、昨年2014年8月には退任しています。

これまでもこのような個人投資家は存在していたわけですが、ほとんどがファンド等に出資する場合が多く、一個人でここまで会社に直接的に投資して成功を収めた人は、あまり記憶にありません。そういった意味では、自ら起業して、その会社を売却し、今度は投資家として、創業間もないベンチャー企業にシードマネーを入れていくというのは、米国で見られる形態であり、日本でも新たなベンチャーのエコシステムが形成されていく予感がします。