論説「大阪都構想『住民投票』で問われるのは、大阪の大都市の将来についてだ」 ―藤井聡氏の「7つの事実」に反論する― 
【前編】

佐々木 信夫

3.「7つの真実」を検証する

そうした2つのオールジャパンの大都市間をリニア―新幹線が1時間でつなぐ。まもなくインフラの整備はそういう方向で行われる。行政の仕組みも、それを睨んで行うというのが選択ではないか。20政令市の1つに大阪市を押し込めておく時代は終わった。そうした20世紀の時代を清算し、21世紀の新たな時代を創出し、大阪全体、日本全体が活気のある列島に生まれ変わろうと手を掛けている、それがいま眼前にある「大阪都構想」ではないのか。

総論はこれぐらいにして、「大阪都にはならない」「大阪市の2200億円が吸いとられる」「都構想で大阪市民は損をする」「ミナミやキタがさびれてダメになる」と断定調で、過激な表現で論説する藤井教授がポイントとして指摘している「7つの事実」とされる点について、争論1、2、…と分けて検証していく。

「『大阪都』にはなりません」を検証

争論1「今回の住民投票が決まっても、「大阪都」にはなりません。」

→この説明は誤解を招く説明である。もし、意図的にそう述べているなら、現行の法制度を全く理解しておらず、基本的な間違いを犯していると言わざるを得ない。

というのも、大都市において特別区の設置を可能にした法律である、大都市地域特別区設置法はその第10条で「特別区を包括する道府県は、地方自治法その他法令の規定の適用については、(中略)、都とみなす」と規定し、特別区が設置されると「都」となることを想定した規定となっている。

なぜ、大阪府が自動的に大阪都にならないかと言えば、同法は「200万人以上の市ないし市域について、東京都以外の他の地域に特別区が設置される可能性を認めた一般法」の性格を有するからである(今のところ、大阪以外動きはないが、想定として日本各地で政令市を中心に合併すれば9地域が可能との含みがある)。

そこで、特別区を置く地域を特定する法整備が必要となる。例えば大阪府内に特別区が設置された場合、大阪都と呼称するために地方自治法第3条の「地方公共団体の名称(変更)」の条項に沿って大阪府を大阪都と呼び換える1行の法律改正が必要となる。ある意味、これは形式的な法改正で、「都」と呼ぶ地域を特定するための法改正にすぎない。国会などで政治的な抵抗で「大阪府」のままにするということは、出来ない。むしろそれは、大都市地域特別区設置法の趣旨に反する違法行為になる。

逆にいうと、大阪市を廃止し特別区が設置された場合、政府はすみやかに大阪都と呼び代える法整備を行う義務が生じよう。住民投票の賛成多数を経て大阪市を廃止し特別区が設置されれば、予定されている2017年4月1日の特別区スタートまでに地方自治法など関連法令が改正され、大阪都となる。戦後はじめて47都道府県の中身が変わることになる。

ちなみに、都道府県と呼称している広域自治体のそれぞれの違いは何か。東京都で使われている「都」は外形において特別区を包括する県に相当する。北海道で使われている「道」は、道内を10幾つかの広域圏に分け、市町村を支援する「支庁」を道の出先機関として置く点に特徴がある。現在、高橋はるみ知事のもとで「支庁に代え地域振興局」を置くと条例改正が行われており、岩手、福島といった面積の広い県にも〇〇地域振興局が置かれていることから、事実上「道」という制度は県と違わず、形骸化したものとなっている。

府と県は外形上も行政権上も全く同一であり、大阪県と呼んでも内実は変わりない。

なぜ府と呼んでいるかと言えば、明治23年の府県制度発足に遡る。明治政府は、47県のうち、政治的に重要な都市すなわち東京市、京都市、大阪市を抱えている県を府と呼び、東京府、京都府、大阪府と呼称した。

3府44県体制で明治23年、府県制度が始まった。それが昭和18年、戦時体制で戦費捻出などを理由に政府によって東京府・市の合体が行われ、東京都が生まれた。昭和22年まで東京都のトップは知事ではなく東京都長官と呼ばれ、4年間で8人の内務官僚が就任している。戦後、返還後の沖縄を含め現在の1都1道2府43県となっているが、ここで大阪府・市の合体が行われると74年ぶりの大改革となる。