ピエトロ・村田邦彦社長「取引先を値段で天秤にかけない。信頼関係を大事にしないといけない。父から継いだ、私の経営の信念です」

バランス

今、心配なのは「味」が安易な方向へ変化していることです。例えば、私が明太子スパゲティを創ることができたのも、仮にカレーなら、缶を開けるだけではなく、スパイスを挽くところからつくるなど、自分が一からやった経験があるからです。だから「明太子がご飯に合うならパスタにも合うはず」と思い、同時にどうアレンジすればいいかもわかったんです。また味わう方たちも、化学調味料などに慣れ、少し味覚のバランスが崩れていると感じることがあります。

沸騰

私は料理と趣味としても楽しみます。自慢のメニューは「炊きたてご飯」(笑)。お米をミネラルウオーターに10分ほど浸し、ザルにあげたら無理に水を切らずに30分くらい置いておく。そして土鍋でお湯を沸かし、グラグラ沸騰しているところにお米を入れるんです。火加減は俗に言う「始めチョロチョロ中パッパ」でいいのですが「赤子泣いてもフタとるな」はそうせず、炊きあがった瞬間にフタを開けてサッと混ぜます。すると、お米が立つんですよ。卵かけごはんにするだけで何杯も食べたくなるおいしさです。ぜひやってみてください。 

歩み

いま、地元の大学で特別講師を務めています。授業では若い人たちに「納得行く回り道をしたい人は私の話を聞いてほしい。レールに乗った人生を歩みたければ聞かなくていいよ」と言っています。35年間の経営を振り返ると「(歩みの速度が)遅かったなぁ」と思うのです。だって、レールも何もないところに手探りでレールを敷いてきたから(笑)。でも、さまざまな回り道をしたはずなのに、後悔すべきは何もない。すべて、世の中に新しいものを生み出すための歩みだった、と感じるのです。

(取材・文/夏目幸明)
『週刊現代』2015年4月4日号より

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日本一、社長の取材をしている記者・夏目幸明の編集後記

村田氏は若き日の失敗を振り返り「やはり、長く残る店の多くはシェフにお客様を飽きさせないだけの「引き出し」がある」と話していた。村田氏にとっては、悔しい挫折だったろう。だが、氏のその後の活躍は、この時、苦い思いをして手に入れた、「失敗」「挫折」という名の「引き出し」なしにはあり得なかったのではないか。

ちなみに村田氏は温厚な人物で、社員は皆「働いている」のは事実だが、どこか「村田氏と一緒に過ごす時間を楽しんでいる」ようだった。このあたりも、人を使った経験から得た「引き出し」があるからなのだろうか。


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