東大卒・元官僚×東大院卒・元日経記者&AV女優社会学者「『肩書き』にこだわる男・『生き様』にこだわる女」対談<後編>

「私はジジイと寝るほうを選んで生きていきたい」
文:中央公論新社特別編集部 吉岡宏

セルフブランディングが大事

宇佐美 自分の場合、肩書き捨てて一番ヘコんだのが、人脈が残らなかったことだったんだけど。そういった意味で、女性はどうなんだろう?

鈴木 女同士だと、どうしても結婚とか出産とか、いろいろなステージで分かれていくわけで。昔ギャルでも出産したとたん、これからはメイクもしません、夜遊びもしません、なんて割り切って生活していけていると思う。 

じゃあ、知り合いの男たちはどうなったかといえば、実は肩書き捨てたからすぐ離れていく、ということもなく。私の場合、「日経辞めたし、こいつはヤレるんじゃないか」と近づいてくる男もいたくらいで(笑)。仕事だけではない、いろんな欲で近づいてくる。人間らしい面が露呈する感じでもありますが。

宇佐美 やっぱり男はそうはいかないんだよね。特に会社にどっぷりつかったサラリーマンなんて、肩書き捨てたら驚くくらい何も残らない。しぶとく生きるのはやっぱり女なのかも。

鈴木 何かが起きたときに、直撃を避ける生き方は、生まれつきそういった場に身を置いてきた女の方がずっと得意ではあると思います。男は、仕事にどハマリするぶん、そのまっただなかでは肩書きの価値を意識しないんでしょうか。

『肩書捨てたら地獄だった』(中央公論新書刊)

宇佐美 だからこそ、定年をむかえた途端に惨めな思いをする人はかなりいるよね。

会社で勤め上げて、役員にまで昇進して。散々鼻を高くしていばりちらした後、いざ退職すると、どこも自分のことを相手にしてくれない。そのまま勤めてた会社に嘱託職員として1/4の給与で、ぐちぐちいいながらそのまま働く……とか。

それで「なんでいままでこんなに頑張ってきたのに、世間は評価してくれないんだ!」とか言っちゃう(笑)。

実際は、すべてセルフブランディングを怠った自分の責任なのに。だからこそ働いているうちから自分がどう見られているのかを意識して、できればいくつかの世界を持って暮らすことが大事なんだと思う。

結論としては今こそ、男は女の処世術にまなべってことなんだろうなあ。皆さんも、男性的な価値観に支配されすぎないように!

鈴木涼美(すずき・すずみ)    1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学 環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。日本経済新聞社に入社後、記者職な ど。2014年秋に退社。現在は文筆を中心に活動。著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサ ヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)。
宇佐美 典也(うさみ・のりや) 1981年、東京都生まれ。東京大学経済学 部を経て経済産業省。在職中に「三十路の官僚ブログ」で自身の給料や官僚生活を公開して話題に。「世界へ飛び出せ」とあおる空気に「それより目の前のおじ さん・おばさんにこそ学べ」と説いた「アンチグローバルマッチョ宣言」などがブレイクし、2012年 BLOGOS AWARD新人賞を受賞。現在Absolute Global Assets株式会社の取締役を勤めつつ、コメンテーターとしてTVへ出演するなど活動の幅を広げる。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝え たいこと』(ダイヤモンド社)、『肩書きを捨てたら地獄だった 挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方』(中央公論新社)。