サラリーマンが嵌まる甘い罠「着服」の誘惑——最初はほんの出来心だった…

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週刊現代 プロフィール

「本当の愛はカネでは買えないって、そんなこたぁ、知ってるんです。キャバクラで出会った女の子にブランドのバッグを買ったら、デートしてくれる。ラブホテルにも、イヤな顔もせずついてくる……。

本当の恋愛じゃあなくったって、こんなオヤジが春を謳歌できるんですから、やっぱりカネには魔力があるんですよ」

銀座や六本木の高級店ではない。埼玉県内の場末のキャバクラ嬢に、破格のプレゼントをするのが、平沼氏いわく「コツ」なのだという。

「愛人用のマンション?そんな豪華なものは用意できませんでしたね。質流れのブランドバッグを必死に安く買うんだ。ちょっとくらい型が古くても、女の子は許してくれる。接待でその店を使って、水増しした領収書を切ってもらったりする。

女の子にはセコい姿がバレてもいいんです。とにかくカネがつづけばよかった。会社で領収書を見るのはどうせ俺だけなんだから」

会社は零細でも、個人よりはカネがある、と平沼氏は言う。得意先のなかには、中小のビル管理会社だけでなく、個人のビルオーナーもいて、彼らが土地持ちらしく豪快にカネを使うのを見たのが「目の毒だった」。

ローン返済のはずが馬券代に

「なんであんなジジイがモテて、俺はモテないのか。カネですよ。ビルオーナーと言ったって、元は普通の農家だったのが都市化に乗じてうまいこと畑を開発業者に売って儲けた成金だ。てめぇで苦労したわけじゃない。なんだこの野郎と思うじゃないですか。

で、俺の目の前には会社のカネがある。持たざる者はワラをも摑むって、まあ、そんな言葉はないけど、そういう個人オーナーに張り合うようにして会社のカネを使い始めたのがきっかけですね。俺はバカなんで、動機先行(笑)。複雑なことはしてないから、すぐにバレちゃった」(平沼氏)

同じ店に通い詰め過ぎ、税理士の指摘を受けてあえなく発覚。言い訳もできず、妻からは離婚届を突きつけられた。

平沼氏は、自嘲気味に言う。

「会社は警察に訴えなかったね。裁判なんかしている企業体力もないし、そんな男を雇っていたのかと評判も落ちる。清掃業者なんて星の数ほどありますから、イメージが傷ついたらおしまいだ。実際、俺はお縄頂戴かと心のなかではビックビクしていましたけど、クビになっただけでしたよ」

平沼氏は「工夫がない」と笑うが、どうせ経理書類を見るのは自分だけ、という状況は、多くの人を着服に走らせる。