「都構想」で大阪はダメになる

文/藤井聡 京都大学大学院教授

大阪がダメになる(理由2)「都市計画の手続き」が煩雑化し、遅延する

さらに、大阪の都心部(市内)の開発にあたっての「行政手続き」は、都構想の実現によって確実に煩雑化する(つまり、ややこしくなる)こともまた、大阪凋落の重要な原因だ。

今ならば、政令指定都市である大阪市は自前の審議会を開いて、速いスピードで自前で決めていくことができる。その際、大阪市は多くの案件について、大阪府に一つ一つ「お伺い」を立てる必要はない。うめきた1期や、あべのハルカスなどの開発は、それにあたる。

ところが都構想が実現すれば、そうした都市計画の決定権限は基本的に全て「府」に移される。とはいえ、大阪府も特別区の意向を無視することはできない以上、大阪府は当該地区の「区長」や「区議会議員」と様々に調整することが必要になる。そして、場合によっては大阪府の主張と地元の特別区の主張とが、食い違うこととなる。

つまり、都構想が実現すれば、合意を形成するのに大変な労力と時間がかかるようになるのである。都市計画に関しては、「都構想」が実現すれば、これまでの大阪市だけの「一重」から、大阪「府」と「特別区」の間の「二重行政」が新たに産み出されてしまう。

さらに、複数の計画主体が関与する様な案件の場合は、さらに「ややこしい」話になる。

例えば、「御堂筋」は北区と中央区の2つの区にまたがる。もしもその2つの区の意見が違ったら、なかなか計画の内容を決めることができなくなってしまう。

つまり、今まで政令指定都市という、大変に大きな権限と財源の双方が保証されていた大阪市があったからこそ、大阪の都心のまちづくり、都市計画が、豊富な財源と簡便な手続きで、様々に進めることができたのである。ところが、都構想が実現し、大阪府と地元の特別区がまちづくりに関わるようになれば、関係者(=ステークホルダー)が増え、その合意の形成が煩雑になってしまい、様々なまちづくりが、「頓挫」してしまうリスクを抱えることになる。

こうして、都構想の実現によって、現大阪市の都心部に投下される財源が縮小していくと同時に、まちづくりの手続き、合意形成プロセスが複雑化し、大阪都心の開発、都市計画は、現在よりも停滞していくことが強く危惧されるという次第なのである。

なお、都構想が実現すれば、膨大な行政パワーが数カ年にわたって都への移行という「内向き」の作業に費やされることになる。これもまた、大阪のまちづくりを数カ年停滞させる原因となる。その間、東京ではオリンピックが、名古屋ではリニア開通に向けたまちづくりが着々と進められ、一人大阪だけが「おいてけ堀」となる──。

大阪がダメになる(理由3)大阪における「都市計画の技術力」の弱体化

以上の二点の他にも、都市計画の技術力やノウハウは、大阪市にはあっても府にはなかったという理由を挙げることができる。大阪府は主として郊外の開発を担ってきたからである。

一方で、都心の都市計画には、超絶に複雑な権利関係の調整が必要であり、それを行うには、特殊なノウハウ、技術力が必要だ。したがって、市が解体され、府が都市計画を行うようになっても、一朝一夕に府がそれを担うことができるとは考えがたい。

もうこの一点だけを考えても、大阪の都市計画が停滞することは決定的だと言うことができるだろう(もちろん、大阪市の都市計画部隊が、何の毀損もなしにそのまま大阪府に組み込まれることになるなら、技術力は保持されるかもしれないが、残念ながら、これまでの都構想の協定書作成の経緯等を考えるに、そうなる見通しは極めて低い。その点については、また別の機会に改めて論じたいと思う)。