「都構想」で大阪はダメになる

文/藤井聡 京都大学大学院教授

「二重行政」問題を越えた決定的デメリット:「大阪がダメになる」

以上、「行政の効率性の問題」について論じた。もちろん、これはとても大切な問題であることは間違いないが、筆者にとっては、それはどちらかといえば、「二次的」「副次的」な問題に過ぎないと感じている。

なぜなら、「都構想」にはもっと大きな本質的問題があるからである。

それは、「都構想」の実現によって、大阪が「大都市」を維持し、作り挙げるため「都市計画」の力をあらかた失い、早晩、大阪の街がさらに衰退し、本格的に「ダメ」になってしまう、という問題である。

しかし、この問題を理解するには、「都市計画」というものが一体何であり、そして、それが一体どの様に進められているのか、というおおよその理解頂くことが必要だ。そしてその上で、「都構想」が「都市計画」に如何なる、ネガティブインパクトをもたらすのかを理解頂くことが必要だ。

ついては以下、その理由を解説することとしよう。

大阪がダメになる(理由1)都市住民が「都市計画の権限」を奪われる

今、大阪市内では,ミナミやキタ、さらにはアベノやベイエリアなどの開発や都市計画が,一体的に進められている.ハルカスで有名な阿倍野区の再開発,JRの北側の広大な敷地を使った「ウメキタ」(大阪の中心地、梅田の北側のエリア)の開発などだ。

これらの開発には大量の民間資金が投入されているが、大阪市の豊富な財源がなければそれらはいずれも「無理」であった。

そしてそれに加えてもう一つ不可欠だったのが、大阪市という政令指定都市が持っている「都市計画=まちづくり」に関する強力な「権限」である。

つまり、現在の大阪の繁栄を支える大都市行政を支えたのは、「政令指定都市・大阪市の強力な財源と権限」だったのである。

ところが、都構想が実現すれば、この財源と権限は、大阪「市」から大阪「府」に移ることになる(例えば、都市再開発方針、キタやベイアリア等の都市再生特別地区、重要港湾以上の臨港地区、一般国道・府道、自動車専用道路、二級河川などの権限は「市」から「府」に移される)。

そうなれば、大阪市内の都市計画は大阪府が担うことになるわけだが、その大阪府の意思決定は「知事」と「府議会」によって下されることになる。そして、知事も府議会議員も、現大阪市の人達からも支持を受けているが、彼らを選んだ大阪府民の内、大阪市民は、たった3割しかいないのである。つまり府議会議員や知事は、7割にも及ぶ大阪市以外の大阪府民の人達からの支持を受けて当選する人達なのである。したがって、大阪市議会なら「GO」を出していたまちづくり案件でも、大阪府議会なら「NO」という判断が下される、というケースはどうしても増えてしまう。

これが、東京との決定的相違である。東京23区民は、都民の実に7割もの人口を受けているのであり、東京都議会や知事の判断において、23区民の意向は最優先される見込みが高いのである。

例えば大阪府は、自分自身の借金の返済に頭を悩ませ、大阪市以外の各地域の道路や下水道の整備率の低さに頭を悩ませている。そして、周辺地域は基本的な公共交通サービスや福祉サービス等についても、大阪市よりもより深刻な悩みを抱えているケースも多い。だから、大阪市が今考えているような、例えば「ベイエリアの開発」や「ウメキタの二期」等の開発は、大阪府全体の意思決定の中では、「贅沢すぎるおカネの使い方だ」と判断され、円滑に進まなくなる恐れがあるのである。

つまり大阪における都心住民の人口の低さが、都区制度における都心の都市計画の停滞をもたらすことになるのである。

そもそも民主国家における大都市は、日本のみならず世界中で、「都市住民」の自治によってつくられてきたのである。それにも関わらず、大阪でだけ都市住民である大阪市民から都市計画の権限を奪い取ってしまえば、大阪の街が衰退していくのも、必然的だとも言えるのである。