68歳、職業「ロッテ打撃投手」裏方の生き様を語る 来る日も来る日も、ただ白球を投げ続けてきた プロ野球特別読み物 

週刊現代 プロフィール

「家1軒の購入に、貯金は3億円を目標にしろ」とも言っています。大金だと思われるかもしれませんが、これはサラリーマンの平均生涯賃金です。人生、野球をやめてからのほうが長い。野球選手は稼げる期間が短いのだから、その間、一生分稼ぐ覚悟でいろ、という意味です。だから、パチンコなんてしている暇はない。私は、選手が煙たそうに聞いていても、「プロで過ごせる日は何日もないぞ」と繰り返します。ある選手は少し活躍すると、調子に乗って外車を乗り回していた。でも引退後、新しい仕事が見つからず「グラウンドキーパーをやらせてほしい」と球団に頭を下げても、断られた。泣いてきた人を何人も見ています。

毎日、真剣勝負です

私は週6日、寮で若手選手と寝食をともにしています。高卒は4年間、大卒、社会人選手は1年間いることが規則で、去年は12人中、8人が一軍に上がった。一人でも多くの寮生を一軍に送り出すことが、今の私の生きがいでもあります。

だから、打撃投手として寮生に投げる時は注意して観察し、練習態度や生活面も気にしています。風呂場などで雑談する時の「ネタ探し」です。

「なぜあの場面で初球を見逃したの?」という野球談議から、流行の話、恋愛相談にも乗る。話す時は、頑張っていることを認め、課題も伝える。彼らのいい面、悪い面の両方に目を向けるようにしています。

「寮長、SMAP知っていますか?」とよく聞かれるから、名前を挙げていくと、若い子は結構喜ぶ。だから、忘れないことに必死です。彼らにとって、爺ちゃん、父親、兄貴、友達のような存在になりたいですね。

正捕手を目指す入団3年目の田村龍弘も、寮生のひとり。青森・光星学院出身で、強気のリードと思い切りのいい打撃でルーキーイヤーの'13年に7試合に出場。しかし、飛躍が期待された昨季の序盤は、立正大から加入した吉田裕太に先発の座を奪われた。

「ナンボやっても今年はダメです」と田村が弱音を吐いたので、「今の時期に身体をしっかり鍛えておけよ。いつチャンスがあるか、わからんから」と言った矢先に、吉田が負傷で登録抹消。その後は、田村が先発マスクに定着しました。

私自身、実は数年前の契約更新時に「来年で契約は終わりです」と言われた。でも、それを言い渡した人が、急に海外勤務となり、一転残留。今に至ります。いつ、どうなるかわからないのが人生。プロを目指す大学生を教える夢がある一方、ここまで来たら、この打撃投手という仕事をやれるだけやってみたい、という気持ちもあります。

ただ、来年も球団に残れる保証はない。だから今日も、目の前の打者に真剣に挑む。思い切り腕を振る夢を見ながらね。

「週刊現代」2015年3月21日号より


 ★ 読みやすい会員専用のレイアウト
 ★ 会員だけが読める特別記事やコンテンツ
 ★ セミナーやイベントへのご招待・優待サービス
 ★ アーカイブ記事が読み放題
 ★ 印刷してじっくりよめる最適なレイアウト・・・などさまざまな会員特典あり

▼お申込みはこちら
 http://gendai.ismedia.jp/list/premium