津村さんのようにある程度の年収や外見、会話力を備え、理想の女性が現れてアプローチしてくるのを待っていた男性たちのその後を追うと、彼らが相手と結ばれることができたかどうかは、自身がなぜ結婚したいのか、という動機が大きく影響しているように思えた。
2005年当時、38歳だった通信機器販売会社に勤めるYさんは、結婚を望む理由を、あからさまに「独身のままだと変な男に見られると嫌だから」と答えていた。
友人や仕事仲間を介した合コンや、独身女性が多く参加する異業種交流会に頻繁に顔を出し、後で2人だけで会って食事を1、2度するまでは進むのだが、一向に交際には至らない。彼と会うたびにどうしてなのか尋ねてきたが、相手の女性についてのネガティブな感想ばかりで、内面など相手の良いところを見ようとしていないと感じた。
「ブランド物をいつも身につけていて、浪費癖がありそう。きっと俺の金を当てにしている」「『肉じゃが、が得意です』なんて言っているけれど、スーパーで売っている肉の値段もちゃんと答えられない。女らしく振る舞っているだけに違いない」---。
2014年秋、いまだ独身で交際中の女性もいない47歳になった彼に、改めてなぜ結婚したいのかと質問すると、やはり答えは以前と変わらず、「『婚活』とかいって、世間で騒ぐようになったから、余計に独身だと肩身が狭いんだよ」と怒りを露にした。
「Yさんは女性の粗探しばかりしていませんか?」と単刀直入に聞いてみたのだが、気を悪くするどころか、当然のごとく、「だって消去法で行くしかないでしょ」と返してくる。最後に、「結婚もそうだけど、女性と付き合う意味すら、分からなくなってきたよ」とぽつりとこぼした。
一方で、2006年から取材してきた証券会社勤務のSさんも、大学時代や仕事関係で築いたネットワークを駆使し、自ら積極的に独身男女を集めたパーティーを企画していた。出会った当時44歳だったSさんは、結婚したい動機について、「所帯を持っていたほうが、仕事でも信頼感が増すので」と説明した。
「婚活」ブームが到来すると、さっそくSさんは結婚情報サービスに入会して活動を始める。それでも、女性との交際にはつながらなかった。パーティーではいつも輪の中心にいて話を盛り上げる人気者で、結婚情報サービスの見合いでもそこそこ会話は弾んだという。
それなのに、なぜなのか---「楽しいだけで終わっちゃうんですよね」。では、どうして発展するように自分からもっと歩み寄らないのか---「そこまでいいと思える女性がいなくて」。なかなか埒が明かなかった。
しかし、ある時、本人いわく「運命の出会い」が訪れる。最愛の母親を亡くした葬儀で十数年ぶりに再会した、学生時代のサークル仲間の女性だった。彼女は1年前に離婚を経験しており、互いにつらさを打ち明け、共感し、励まし合っていくうちに、恋愛感情が芽生えたという。
「結婚は、人生を共に楽しむためだけにするもんじゃない。互いの苦しみも分け合うんだ。彼女と付き合っていてそう思えたんです」
交際1年半で、Sさんは彼女とゴールインした。2013年冬、51歳の時だった。
『男性漂流』P26~36より抜粋
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