奥田祥子『男性漂流』より【第2回】
~「婚活」プレッシャーと「生涯未婚」ラベリングに苦悩する津村さん~

「婚活」疲弊

「婚活」ブームによって変わったのは、女性のほうだ。15年余り前から独身男女のマッチング事業に携わり、2007年にネットを介した結婚情報サービスと、出会いパーティーを主催する会社を興した「フュージョンアンドリレーションズ」の有井清次社長(47歳)は、その変化をこう説明する。

「従来は、自分から男性にアプローチするのは女性らしくないといった考えから、結婚するために活動していることを周囲の人、親友にさえも恥ずかしくて明かせなかった女性たちですが、結婚情報サービスへの入会が急速に増え、次々と見合いを申し込むなど活発に活動するようになりました。現在男女の比率では、3対7ぐらいで圧倒的に女性が多い。男女比では不利にもかかわらず、女性からの申し込みで見合い、交際につながるケースが多いのです。

 一方で、男性はというと、そんな女性たちの変化に反比例するように消極的になっています。何もしないと前進しないから、しょうがなく入会はした。でも、女性に対してガツガツ行くのは格好悪い、けれど、やっぱり行くなら男らしく自分から、といった相半ばした感情を抱いたまま、女性の攻勢に圧倒されているように思いますね」

「婚活」ブームの火付け役となった『「婚活」時代』では、特に女性に限定して結婚するために積極的に行動することを提案していたわけではない。結果として、強く影響を受け、自ら動き出したのが女性ということなのだろう。

そうして、「婚活」という言葉・概念が登場してしばらくは、その必要性やノウハウが中心だった言説が、「婚活疲労」や「婚活難民」などネガティブに語られ始めるようになったのは、ここ2、3年のことだ。しかしながら、その当事者たち、特に男性の疲弊はブームが到来した直後から表れていたのである。中でも、津村さんのように、「待つ」から「行く」姿勢に180度転換したケースでは、その苦悩は深かったのではないだろうか。

有井社長を含め、ネットを活用した複数の結婚情報サービス会社の幹部から聞いた話によると、男女ともに入会して会員の情報が公開された直後が最も申し込みを受けやすく、その段階でいかに見合い、交際につなげていくかが重要なカギである、という見解は一致していた。津村さんも当初は申し込みが殺到していたのに、より好みをし過ぎた可能性が高い。

また、女性が「婚活」に積極的になることにより、従来は女性に求められる条件の上位だった外見や年齢が、男性にも適用されるようになってきているという。

「ネットから多数の相手の情報と写真を見られるシステムが主流になりつつある中、男女問わず、年齢が高いほど不利でもある外見のインパクトが強くなっています」

と、有井社長は話す。

確かに、「婚活」ブームのおかげで、結婚情報サービスや結婚相談所に入会して活動することへの抵抗感が弱まった利点はあるかもしれない。効率的に相手を探すには、ある意味ひとつの有効な手段と言えるだろう。

だが、それが独身男女の「条件闘争」であることに変わりはなく、むしろ、「婚活」が活発化すればするほど、競争は激化しているのである。もともと異性との付き合いが苦手で、傷つきやすい人にとっては、どっぷり浸かり過ぎることは精神的なダメージを招き、相手探しの意欲さえ失ってしまう危険性をはらんでいる。

男性漂流』P14~25より抜粋

奥田祥子 (おくだ・しょうこ)
ジャーナリスト。1966年、京都市生まれ。1994年、米・ニューヨーク大学文理大学院修士課程(メディア論、社会心理学専攻)修了後、新聞社入社。男女の生き方や医療・福祉、家族、労働問題などをテーマに、全国を回って市井の人々を中心に取材を続けている。所属部のリストラを契機に、本格的に独自の活動を始めた。自治体主催のシンポジウムでの講演のほか、「Media Influence Over the Transformation of Stigma Toward Depression in Japan」(米学術誌「Sociology Study」に掲載)等の論文も発表。著書には『男はつらいらしい』(新潮新書)、共訳書には『ジャーナリズム用語辞典』(国書刊行会)がある。独身で、唯一の肉親である母親を介護している。


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