大阪都構想のデメリット:「市の五分割」によって行政コストが上がるというリスク

文/藤井聡(京都大学大学院教授)
藤井 聡

「三重構造は、何も問題でない」という説明は、至って不条理

ところで、この点について、大阪維新の会の「都構想」のHPには、次のようなQ&Aが掲載されていますが、その内容は、全くもって、市民を安心させるようなものではありません。まずは是非、下記、ご一読ください。

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Q.大阪都構想の実現で、実際には、都、特別区、一部事務組合の三重行政にならないの?
A.「大阪都と特別区で明確に役割分担することが、都構想の基本的な考え方です。
“一部事務組合”という組織で、ごく限られた事務のみを共同実施しようとしていますが、三重という言葉は当てはまりません。都道府県が担う方向で議論が進んでいる「国民健康保険」や民営化を予定している「水道事業」が含まれているため、財政規模が大きく見えてしまいがちですが、保険料のバラツキ見直しや保険財政安定の観点から、国民健康保険や介護保険の運営を共同で行うことはむしろ当然のことです。
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http://oneosaka.jp/tokoso/q-and-a1.html 参照)

是非、この文章を繰り返しお読みになってみてください。

確かにこの文章では「三重という言葉は当てはまりません。」という言葉が書かれています。しかし、その「理由」が一切書かれていないのです。これでは、理性的な利民ならば、安心するわけにいかず、余計に不安になることもあるでしょう。

しかもここには、市民を安心させるかの様に、「ごく限られた事務のみ」が一部事務組合で担当するかの様に書かれているのですが──この記述には、重大な疑義があります。協定書に書かれている事業のリストは、「ごく限られた事業」とは決して言いがたい量なのです。

表1をご覧下さい。これが、今の協定書に書かれている、一部事務組合をつくって、特別区が共同で遂行しなければならないもののリストです。

表1 一部事務組合(いわゆる「プチ大阪市役所」)で共同で行うと言われている事業
①事業  国民健康保険事業、介護保健事業、水道事業及び 工業用水道事業

②システム管理 住民情報系7システム〔 住民情報系7システム〔 住民基本台帳等システム、戸籍情報税務事 住民基本台帳等システム、戸籍情報税務事 住民基本台帳等システム、戸籍情報税務事 務システム、総合福祉国民健康保険等介護統合基盤・ネットワークシステム 〕等

③施設管理 
<福祉施設> 
児童自立支援施設、情緒障がい 児短期治療施設、児童養護施設、母子生活支援施設、母子福祉施設、保護施設、大阪市立心身障がい者リハビテーションセンター、福祉型障がい児入所施設、福祉型児童発達支援センター、ホームレス自立支援センター、障がい者就労支援施設、特別養護老人ホーム、医療保護施設・養老人ホーム、特別擁護老人ホーム
<市民利用施設>
青少年野外活動施設、ユースホテル、青少年文化創造ステーション、児童文化会館、青少年文化創造ステーション、児童文化会館、障がい者スポーツセンター、市民学習センター、大阪市中央体育館、大阪市立プール、靱庭球場、女性いきいきセンター
<その他>
中央急病診療所、都島休日急病診療所、十三休日急病診療所、今里休日急病診、中野休日急病診療所、沢之町休日急病診療所、中野休日急病診療所、大阪市動物管理センター、キッズプラザ大阪、大阪市立北斎場、大阪市立小林斎場、大阪市立佃斎場、大阪市立鶴見斎場、大阪市立瓜破斎場、大阪市立葬祭場、泉南メモリアルパーク、瓜破霊園、服部霊園 、北霊園、南霊園

④財産管理 
「大阪市未利用地活方針」に基づき処分検討とされた土等の管理及び処分、オーク事業の終了に伴い大阪市が引渡しを受けた財産管理及び処分、大阪市の土地先行取得事業会計に属していた財産管理及び処分

これが「ごく限られた事業」に見えますでしょうか───?

そもそも、上記の解説文書の中に明記されているとおり、保健や水道が入っているため、「財政規模が大」きいのは事実です。ただ、それぞれの運営の詳細は未定な状況であり、実際の事業規模がどれくらいになるのかは、今のところ分からない状況です。ただし、その事業規模は、場合によっては6400億円程度(これは、堺市の全予算規模に匹敵する額です)になる可能性があるのではないか、とも指摘されているくらいですから、維新の会のHPに記載されているような「ごく限られた事業」では、断じてないと言うことができるでしょう。