二宮寿朗「PK戦を制すために」

二宮 寿朗

“遊び”で得られる発見

 PK戦を制すための準備。しかしそれは何も、相手キッカーやGKの特徴を分析することだけではないように思う。

 昨年、元日本代表GKの小島伸幸氏に話を聞く機会があった。小島氏の現役時代、Jリーグは98年までPK戦で試合の決着をつけていた。そんな背景もあって、キックのうまい選手を捕まえては自主的にPKのトレーニングをやったという。湘南ベルマーレ時代、一番の練習相手になったのが「10番」のベッチーニョであった。

 彼は懐かしそうにこう振り返った。
「試しにフェイントをかけても、ベッチーニョはものの見事に裏をかいてくるんですよ。どうしてなのかと思って、あるとき、足のステップを変えてみたんです。右に飛ぼうとする場合、人って左、右とステップを踏むのが普通じゃないですか。だから今度は右、左のステップに変えてみたら、引っかかったんです。かなり飛びにくいんですけどね。なるほどベッチーニョはここを見ているんだと思いましたよ」

 PKのトレーニングといっても、「練習が終わってからの遊びの延長線上」というレベル。だが、「そういった〝遊び〟から、いろんな発見も結構あったんです」と小島氏は言った。

 遊びの延長線上から得られる1対1の駆け引き。JリーグのクラブではPK戦が廃止されて以降、居残り練習でのそんな風景が減ってきているのかもしれない。個人的な技術レベルを上げていく時間に充てることも重要だが、日ごろからの「駆け引き」「遊び」という点にもう少し焦点を当ててもいいように思う。

 UAE戦のあのPKシーンに話を戻そう。
 1人目の本田が外した後、日本は相手のトップバッターとして出てきたエースのオマル・アブドゥルラフマンにボールの速度を弱めたチップキックで決められた。UAEのマフディ・アリ監督が「あのキックで相手GKの士気が落ちた」と語ったが、守護神の川島永嗣にその残像が残っていたのか2人目のキックには動かなかった。いや、動けなかったのかもしれない。本田が外したことにプラスして、アブドゥルラフマンのチップキックが駆け引きにおいてUAEを優位に立たせていた。

「PK戦は時の運」で片づけるのではなく、UAE戦の“敗北”から何を学ぶべきなのか。ロシアW杯で16強の壁を突破する目標を掲げるなら、PK戦に勝つための準備も考えていかなければならない。

 たかがPK戦と言うなかれ。
「遊び」や「駆け引き」が、実は決定力の向上にもつながってくるキーワードのひとつになってくるかもしれないのだから。