二宮寿朗「PK戦を制すために」

二宮 寿朗

W杯4戦4勝のドイツ代表

 だが、このPK戦に滅法強いチームがある。それが昨年のブラジルW杯を制したドイツ代表だ。
 今回のW杯こそ1度もPK戦を経験することなく勝ち上がったが、82年のスペイン大会準決勝でフランス代表を下して以降、西ドイツ時代も含め、W杯のPK戦で一度も負けたことがない(4戦4勝)。

 彼らはPK戦を想定して、用意周到に準備しておくことでも知られる。
 有名なエピソードがある。06年のドイツW杯、準々決勝アルゼンチン戦。1-1のままPK戦に突入し、GKイェンス・レーマンは右足のストッキングに入れていたメモ用紙を読んでから、キッカーと対峙している。2人目、ロベルト・アジャラのキックを抑えるなど2本を止めて、チームを勝利に導いたのだ。

 のちに、その「レーマンメモ」は公開されている。アジャラについては「長い待ち、右」と書かれてあったという。実際、ボールは逆の左に来たのだが、「長い待ち」は当たっていた。

 アルゼンチンの選手からしてみれば、メモを読んだレーマンにアジャラが止められたのだから「俺も読まれている」と多少なりとも動揺はあったに違いない。メモは8人分しかなかったようだが、アルゼンチン側は知るよしもない。精神的な駆け引きにおいて、レーマンのほうが優位に立っていた。

 ドイツの選手はPK戦4試合でキックを18本打って、外したのはわずかに1本だけ。これも単なる偶然とは思えない。