[障がい者スポーツ]
伊藤数子「2020年東京で踏み出す『オリパラへの新たな一歩』」

スポーツコミュニケーションズ

小さなことから始まる改革

 オリンピックとパラリンピックをひとつの大会にするという案は、わけ隔てのないノーマライゼーションの社会への実現という観点からも、非常に素晴らしいアイディアだと思います。ぜひ、実現に向けてトライすべきです。とはいえ、実行に移すとなると、もちろん一筋縄ではいかないことは想像に難くありません。そこにはさまざまな課題が浮上してくることでしょう。

 例えば、オリンピックとパラリンピックをひとつにした場合、大会期間の長期化は避けられません。さらに同時期に行なえば、それだけ一度に集まる選手や関係者の人数が増えるわけですから、競技会場や選手村の規模もこれまでのものでは対応しきれなくなります。運営スタッフやボランティアの増員も必要でしょう。他にもさまざまな課題が浮かびます。

 もちろん、だからと言って、やらない方がいいと言いたいわけではありません。きちんと議論を重ね、どんな方法があるのか、本当にひとつにすべきなのかを考える時間が必要なのです。

 では、今は何もできないのかと言うと、そうではありません。まずは小さな一歩を踏み出すことはできるのではないでしょうか。例えば、大会のエンブレムやマスコット、カラーの統一化です。

 現在、エンブレムやマスコットはオリンピック用とパラリンピック用を用意するのが通例となっており、現地スタッフのユニフォーム、競技会場や街中に飾られるポスターや横断幕などで使用される大会カラーも異なります。そのため、オリンピック終了後、スタッフのユニフォームも、会場や街中のデコレーションも、ショップの商品も、すべてパラリンピック用に替えなければならないのです。これには経費も労力もかかります。はじめから、すべて統一しておけばとてもエコになります。

 それを2020年東京オリンピック・パラリンピックで世界初の事例として行なえば、「オリンピックとパラリンピックは統一のスポーツの祭典である」ことを、世界に向けて強く発信することができるはずです。「東京が統一の初めの一歩を踏み出した」ことをオリンピック・パラリンピックの歴史の1ページに刻むことになるでしょう。

伊藤数子(いとう・かずこ)
新潟県出身。障害者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。1991年に車いす陸上を観戦したことが きっかけとなり、障害者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するため の「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障害者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障害者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障害者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。