「暮らしを見つめ直すきっかけをそっと置いて、小さな循環を生んでいきたい」---「灯台もと暮らし」編集長・佐野知美さんインタビュー

佐藤 慶一 プロフィール

リアルの行動に反映してもらえるよう、一次コンテンツを作り続けたい

---「これからの暮らしを考える」というテーマを掲げていますが、どんな思いを込めているのでしょうか?

このメディアをつくる背景には、自分の人生をもっと楽しく、もっと豊かに暮らしていこう、という思いがあります。「これからの暮らしを考える」ためのきっかけでありたいです。実は「これからの暮らし」という言葉は便宜的に使っていて、サイトオープン直前までは「リアルに還るためのウェブメディア」と表現していました。

---これまでの話を聞くと「リアルに還る」というイメージは理解できるのですが、初見だとピンとこないというか、メッセージがぼやける感じがします(笑)。

まさにそういったこともあって、いまのキャッチコピーになっています(笑)。もちろん、いまでも裏テーマとして「リアルに還るため」ということを位置づけ、記事を読んだ読者の方がリアルの行動に反映してもらえるようなメディアになりたいです。

---実際の行動につなげてもらうために、意識していることはなんでしょうか?

前提として、「灯台もと暮らし」は女性的な価値観をもっている人にしっくりくるメディアだと思っています。ほかにも、メンバー内では問題提起型より「いいね! 共感型」と言っているのですが、あまり押し付けるのではなく「こんなものもあるよ」と、きっかけをそっと置くような記事づくりを心がけています。

モヤモヤすることがあったり、このままでいいのかなと思っている人が素敵なひと・もの・ことを知ることで、「そうそう、こういうのいいと思ってたんだよね」という反応を増やしていきたいです。

---ただ、ちゃんと編集部の趣味・趣向は前面に出ている記事もあって、雑誌的だと思います。

押し付けないようにしつつも、それぞれのメンバーのコラムを掲載する「いつもと暮らし」カテゴリーを中心に、編集部が強い関心・愛を持っているものを取り上げています。そういう意味で、将来的にはもっとそれぞれの個性を取り入れて、個人が立っているメディアにしていきたいです。

---サイトを見ると、「郷に入る」「営みを知る」「旬と遊ぶ」といった独特のカテゴリーが並んでいます。

合宿のときに、どんなことを書きたいかを共有し、カテゴライズしたところ、人、もの、こと、暮らし、営み=仕事、といったおおまかな分類となりました。最初はカテゴリーがなくてもいいかなと思っていたんですが、記事が増えてくると収拾がつかなくなり、一応設けています(笑)。

意識していることとしては、英語(カタカナ語)をあまり使わないようにしています。ライフスタイルではなく、暮らしと呼ぶようにしていたり。メンバーの書きたいことを日本語に落とし込むと、「いつもと暮らし」「営みを知る」「旬と遊ぶ」「語るを聞く」「郷に入る」「食を楽しむ」という6つになりました。

---言葉にもこだわりがあるとのことでしたが、メディア運営で大事にしていることはなんでしょうか?

取材対象者に直接じっくり話を聞く、遠い地域に足を運ぶなど、一次コンテンツを作り続けることです。編集長として編集チームに対して「好きなことだけやって」ということだけ共有しています。ただ、好きなことをやるにあたって直面する面倒くさいことには手を抜かないようにも伝えていて、取材対象のいい面だけでなく悪い面も取り上げることは意識しています。

また、第一特集と第二特集を主軸にしていることもこだわりです。第一特集では地域取材でその土地を立体的に見せ、第二特集では自分たちが住む東京をエッジの利いた切り口で取り上げていきます。そのほかにも、紙媒体の編集者にインタビューする「紙とウェブの交差点」や、女性の生き方を考える「かぐや姫の胸の内」といった特集もおこなっています。切り口にこだわることで、雑誌の考え方や要素をウェブに持ってきたいです。

読まれている記事トップ3のうち2つが取材予定ではなかったことから、偶然の縁に乗ることも大事にしています。徳島県神山町に拠点を移した若者を取材してキーマンを紹介したもらう予定だったのですが、そこに集まった地元の親子やギャルの話を記事にしたら多く読まれることになりました。

---デザインの話も聞かせてください。PCでサイトを見ると、左に写真、右にテキストというユニークなデザインですが、どういったことを重視したのでしょうか?

特集記事は文字数が多いので、雑音のないデザインにしました。ソーシャルメディアからの流入が多いこともあり、スマートフォンで閲覧しても集中して記事を読んでもらえるような設計になっていると思います。