佐藤義則(ソフトバンク投手コーチ)「勝てない投手を勝たせるのが、私の仕事」 二宮清純レポート ダルビッシュ有、田中将大を育てた「優勝請負人」が明かす

週刊現代 プロフィール

小林は王の野球観に佐藤のそれが重なることを知っていた。

「王会長は〝ピッチャーは投げて覚える〟という考え方です。これは佐藤さんも一緒。マウンドやブルペンなど傾斜のついたところで投げないと、体の使い方や投げ方は覚えられない。佐藤さんは、そう語っていた。しかも、経験が豊富で、引き出しの数も多い。ぜひとも呼びたい人材でした」

一昨年、球団創設9年目にして悲願の日本一を達成した楽天も、昨年はエース田中の抜けた穴を埋められず、低迷した。

腰痛の悪化を理由に、5月下旬から約2ヵ月もチームを離れた星野は、9月18日、シーズン限りでの退任を発表した。

その頃、首位のソフトバンクは2位・オリックスと激しい優勝争いを演じていた。福岡での9月23日からの楽天4連戦前、小林は星野に慰労の挨拶をした後で、単刀直入に切り出した。

「佐藤さんはいいコーチですね……」

感触は悪くなかった。星野は前向きな言葉を返した。

「自分についてきてくれたコーチを評価してもらえるのは嬉しい。そういう話があれば、ありがたい」

かくして、シーズン終了を待って交渉が始まり、佐藤のソフトバンク入りが決定した。コーチとして着る5つ目のユニホームだった。

「教えてもいいんか?」

佐藤の手腕を評する上で抜きにして語ることのできないピッチャーが2人いる。海の向こうで活躍するダルビッシュ有(レンジャーズ)と田中である。

佐藤はトレイ・ヒルマン政権下の'05年、日本ハムの二軍投手コーチに就任した。その年、ドラフト1巡目で入団したのがダルビッシュである。

佐藤の目に大物ルーキーは、どう映ったのか。

「彼はヒザを痛めて入ってきたため、キャンプでは、ほとんど投げられなかった。ピッチングを開始したのは(二軍の本拠地)鎌ケ谷に帰ってきてから。コントロールはバラバラだったけど、たまに〝オッ!〟とうなるようなボールが何球かありました」

佐藤には、どうしても気になる点があった。左足を踏み出した際、その部分のマウンドの土が深く掘れていなかったのだ。

これは踏み込みの弱さを意味していた。踏み出した足でガッと地面をつかまなければ強いボールは投げられない。