熱いぜ、広島 帰ってきた黒田と待っていたマエケン「男たちの友情」二人のエースには二人しか知らない物語があった

週刊現代 プロフィール

自分の後を託した若きエースが苦しむ姿を見て、カープに帰ってくることを決めた黒田。そして、重圧から解放してくれるチームの支柱を待ち望んでいた前田。潤沢な資金があるわけではなく、選手層も厚いとは言えないカープにあって、共にエースとして投げ抜いてきた二人には、二人だけが分かち合える物語があったのだ。

ただ、深く共感し合っているのは、黒田と前田だけではない。

生え抜きが多いからこそ、弱かった時代を共に戦ってきたからこそ、カープの男たちは、みなが熱い友情で結ばれている。

ベテラン捕手の倉義和(39歳)。黒田の1学年下で、'98年に入団したこの男には、絶対に忘れられない黒田への恩義がある。

「'05年の春季キャンプのときのことです。当時、黒田はすでにチームのエース。一方の倉は、レギュラーを掴めるかどうか、ギリギリの位置にいる捕手でした。

そんな倉が、ある日のブルペン練習で黒田の球を受ける際、新品のキャッチャーミットを持ってきたんです。使いやすく慣らすために、拳でミットを叩いていました。すると、それを見た黒田が『(シーズン直前の)いまの段階でミットを作っているなんて、投手に失礼』と激怒。シーズン開幕前の大事な時期に、まだ道具の準備すら整っていない倉の自覚のなさが、許せなかったんでしょうね。倉は大慌てで謝罪しましたが、黒田は許さず、その日は一切口を利かなかった」(スポーツ紙ベテラン記者)

強打と好リードの捕手として、大学時代にはベストナインにも選ばれた倉は、カープ期待の捕手だった。だが倉は、ルーキーイヤーから何度も与えてもらったチャンスを活かせず、7年もの間、常に控え捕手の地位に甘んじてきた。

努力の末、エースの座を掴みとった黒田は、そんな倉が歯がゆかったのだ。

「その日から、倉は変わりましたね。普段の練習から真剣に取り組むようになりましたし、他の捕手の動きを熱心に観察し、自分に何が足りないのか考えるようにもなりました。そして、その年の開幕スタメンも勝ち取った。

その後はライバル捕手の石原慶幸との併用も多かったですが、黒田からの信頼は厚かった。メジャーへ旅立つ'07年まで、黒田の捕手は、必ずと言っていいほど倉でした」(前出の記者)

二人の存在がチームを変える

あの日、黒田が叱ってくれたからこそ、今日まで長くプロ野球選手であり続けることができた。だからこそ、もう一度だけ黒田の球を受けたい—。倉はいま、そう願い、今年で40歳になる身体を鍛えぬいているという。

「『黒田さんが広島に帰ってくるまで現役というのが目標だった。年齢的にもチャンスは少ないかもしれないけど、バッテリーとしてやっていきたい。ダメだったら引退という気持ちです』と、倉は強く語っていました。もちろん選手起用を決めるのは首脳陣ですが、黒田自身は、その成長を間近で見てきた倉を相手に投げたいと思っているはずですよ」(前出の球団関係者)