あなたはスルーするほう? されるほう? 『99.996%はスルー』

進化と脳の情報学
竹内 薫, 丸山 篤史 プロフィール

 恋愛にせよ新発売の商品にせよ、スルーされたらそれでおしまい。そして、スルーされないためには勝者、すなわち「1番」にならなければいけない。

 かつて某国会議員が「なぜ1位じゃないといけないんですか? 2位じゃダメなんですか?」という迷言を発して騒ぎになったが、これほど答えが明白な質問も珍しい。

 人間社会には、なんらかの理由があって、1番以外はことごとくスルーされる、という法則がはたらいているのだから。スルーされないためには1番じゃないと、ダメなのだ。くだんの国会議員だって、選挙で2番、すなわち次点でもかまわないのであろうか。無論、そんなことはないはずだ。

 ところで、この国会議員の発言、別の観点からも興味深い。自分はスルーされたくないが、他者はスルーしてもいい。そう、この矛盾とも思われる心理がスルー現象の一因なのだ。自分が1番であることは棚上げして、他者を2番に貶めようとする。自分はスルーされたくないが、他者はスルーされて当然。そんな心理が見え隠れする。

 スルーするにも理由がある。スルー現象は、動物やヒトの進化、特に脳の発達と結びついているらしい。われわれの脳ミソには、増殖する一方の情報に圧倒されず、取捨選択するための機能が備わっているのだ。注目すべきは「無意識」の存在だ。無意識にスルーしている情報こそが、じつは自分を形作っているのかもしれない。だとしたら、日頃スルーした「つもり」でいた情報の中にキラリと光る宝があるのかも……。

 とにかく人聞社会はスルーの連続。自分がスルーされたくないなら、まずは自分の胸に手をあてて、過去に自分が他人や商品をスルーしたときの状況を必死になって思い出し(そもそもスルーしているから簡単に思い出すこともできないわけだが……)、徹底的に分析して、スルーする理由を明確にすることから始めなくてはならない。

 まずは、読者の皆さんに、自分の感覚が、いかに「事実をスルーしているのか」を自覚していただくことから始めてみよう。

(ここで認知に関する例題が紹介されますが、省略させていただきました)

 もう一問、チャレンジしてもらおう。これも自分の感覚が「物理的事実」をスルーしてしまっていることが、よく分かる事例である。

(ここでも認知に関する例題が紹介されていますが、省略します)

 いかがだったろうか。この本は単なるハウツー本ではない。自然界や人間界に蔓延る「スルーの法則」を科学目線で分析し、最終的に「スルーされないためにはどうすればいいのか」を考えたい。

 え? そんな分析結果、どこまで信用できるのかわからないじゃないか? いやいやいや、この本の分析が正しいかどうかは、すでに判明しているのだ。あなたがこの本を手にとって、読む気になっている点で、すでにこの書物はスルーされていないのだから。

 今からでも遅くはない。この本の著者たちと一緒に、さあ、あなたも、スルーされない人生を始めようではありませんか!

著者 竹内 薫(たけうち・かおる) 
サイエンス作家。一九六〇年生まれ。東京大学教養学部教養学科、同理学部物理学科卒。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻、理学博士)。「ひるおあび!」(TBS系)、「サイエンスZERO」(NHKEテレ)など、テレビでの科学コミュニケーションでもお馴染み。主な著書に『99.9%は仮説』(光文社新書)、『熱とはなんだろう』『超ひも理論とはなにか』『不完全性定理とはなにか』『ペンローズのねじれた四次元』(いずれもブルーバックス)など多数。

著者 丸山篤史(まるやま・あつし) 
一九七一年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科単位満了退学。医学博士。生命科学(生理学、神経科学、医用工学)専攻。理化学研究所、長岡技術科学大学を経て、基礎生物学研究所在籍。特別協力研究員。
『99.996%はスルー』
進化と脳の情報学

竹内 薫=著
丸山篤史=著

発行年月日: 2015/02/20
ページ数: 208
シリーズ通巻番号: B1901

定価:本体  860円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)