元エリート裁判官が衝撃の告発! 政治家の圧力に屈して名誉毀損訴訟の認定基準を変更した最高裁判所は「最低裁判所」だ! 

『ニッポンの裁判』著者 瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授
瀬木 比呂志 プロフィール

その結果、メディアの敗訴率は非常に高くなり、「訴えられればおおむね敗訴」というに近い状況となっているわけです。これは、認容額の一律高額化以上に大きな問題です。国民の「知る権利」の根拠が裁判所によって掘り崩されているのです。

Q:しかも名誉毀損訴訟では、論点が10点あっても、1点でも瑕疵があれば、損害賠償を認められ、報道では敗訴と報じられる。新聞やテレビは9勝1敗であっても、9勝のほうはまるで報じてくれませんからね。

瀬木:そうですね。かつての裁判官なら、中心的なところで真実性の抗弁が立っているのに、はしっこのほうだけ原告の言い分を認めるなんてことはしなかった。それが常識というものです。ところが、ほとんど被告の言い分を認めているのに、どうでもいいような隅のところでちょっとだけ原告の言い分を認めて少し勝たせてあげる、そういう裁判もいくつかみました。

ともかく、政治家やえらい人は、少しくらいは勝たせてあげないとまずい。そういう感覚が見え見えなんです。

実に情けないというか、何というか。『ニッポンの裁判』の全体で詳しく裁判の全分野について論じたことですが、かつての裁判官のコモンセンスだったことすら崩れてしまっているのです。まさに、「株式会社ジャスティスの悲惨な現状」(第7章のタイトル)なのです。

もちろん、本当に一部しか負けていないのに敗訴、敗訴と報道するメディアのあり方も常識を欠いています。

Q:ところで、欧米における名誉毀損訴訟と日本の名誉毀損訴訟の違いはどこにあるのでしょうか?

瀬木:僕は、民事訴訟法学者であって、民法学者ではないので、各国のことを細かくまでは知りません。しかし、アメリカでは、名誉毀損の立証は原告に非常に厳しいですよ。ちょっとかわいそうなくらいです。これは、表現の自由と知る権利を非常に重視するからです。アメリカという国は、そういう基本は押さえていますからね。

世界的にみても、おそらく、ことに今日では、アメリカと同様の配慮をしている国が多いのではないかと思いますね。というか、日本の2000年以前の判例にも、そういう配慮はあったと思うのですよ。

今の日本の裁判所は、まさに、時代に、国際標準の方向に反した流れを、刑事のみならず、民事でも、行政でも、無理やり作っているのです。

Q:不思議なのは、この問題に対して、新聞やテレビ局などの言論機関の反応がきわめて鈍いことですね。本来であれば、週刊誌メディアなどと共闘してもよい問題なのに、無関心を装っていますね。

瀬木:これは、もう、僕には、全く理解しがたいですね。

明日は我が身だということくらいは、ジャーナリストならすぐわかるはずなんですよ。だって、週刊誌だけの問題じゃないことは明らかでしょ?