元エリート裁判官が衝撃の告発! 政治家の圧力に屈して名誉毀損訴訟の認定基準を変更した最高裁判所は「最低裁判所」だ! 

『ニッポンの裁判』著者 瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授
瀬木 比呂志 プロフィール

『判例タイムズ』を出しているのは、僕も論文を掲載し、本も出していた会社です。『民事訴訟の本質と諸相』の掲載や刊行をめぐって決裂し(結局日本評論社から刊行)、僕は、そこから出していた本の主要なものは、新たに日本評論社から改訂して出し直しているところです。

この雑誌、出版社は、裁判所との関係が非常に深いのです。といっても、一般的には、出ている論文、ことに個人によって書かれているものには傾向性などはありません。僕の論文でも載っていたのですからね。

しかし、新たな立法等に関連して最高裁事務総局が資料を出したり、メッセージを発する、あるいは事務総局の方針に基づく裁判官たちの研究会や論文、まあ、これは一種の御用研究会・論文ですが、そういうものが出るのはこの雑誌と大体決まっているんです。

おそらく、当時東京にいた中核的な裁判長たちは先のような背景を知っていたと思いますし、裁判官の世界は狭い閉じた社会なので、半年もすれば、口コミで、大ざっぱにでも、「どうも名誉毀損はああいうことになったらしいよ」と全国に情報が広まってしまうのです。背景まではわからなくてもね。

まあ、そういう意味では会社と何ら変わりないと思えばいいんです。裁判官独立という頭があるから理解しにくくなる。『ニッポンの裁判』第7章で詳しく分析したように、「株式会社ジャスティス」だと思えばいいんです。その内部統制は、おそらく、新聞やマスコミ関連、出版関連等の企業よりもずっと強いですよ。

Q:出版社でジャーナリズムに関わる立場からすると、損害賠償額の高騰以上に、近年はメディア側の立証責任が著しく厳しくなってきたことが重大だと思います。当事者の行為を目の前で見ているような取材をしない限り、ほとんど報道の真実性の証明ができない。人権感覚の欠落した報道など、週刊誌側に問題はあったかと思いますが、昨今の裁判所の基準では、丁寧な取材をした記事でも、訴えられると、ほぼ100%負けるという感覚です。

『ニッポンの裁判』第7章「株式会社ジャスティスの悲惨な現状」では裁判所をブラック企業的な企業に見立て、裁判所が極めて危機的な状況にあることを描いている

瀬木:そのことは僕も書いているとおりです。確かにかつての賠償額は低すぎた。しかし、だからといって、政治家に突き上げられて唯々諾々として変なマニュアルを作って全部一気に上げるなどというのは、民主主義国家の裁判所がすることではありませんよ。中国や韓国のことがいろいろ批判されているけど、それらと比べてもどうなんですかね、こういうのは。どう思われます?

Q:確かに、欧米先進諸国だったら、裁判所がこんなことをしたら大問題になるでしょうね。

瀬木:認容額以上に問題なのが、おっしゃるとおり、裁判所の判断のあり方です。近年の日本の判例は、被告の、記事の真実性、あるいは真実であると信じるに足りる相当性(たとえ真実ではないとしてもそう信じるに足りる相当な理由があれば免責されるということ)の抗弁を、容易に認めなくなった。判例を見ると、ホント、非常識な、かたよった認定判断までして、とにかく被告の抗弁を認めないんですよね。驚きました。日本の裁判所はこういう裁判をするようになっちゃったのかと。