元エリート裁判官が衝撃の告発! 政治家の圧力に屈して名誉毀損訴訟の認定基準を変更した最高裁判所は「最低裁判所」だ! 

『ニッポンの裁判』著者 瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授
瀬木 比呂志 プロフィール
最高裁事務総局による思想統制は〝洗練〟され、かつ〝芸術的〟とさえいえるもので、内部事情を知らない非専門家には、そのからくりはなかなか分からないと、瀬木氏はいう

かりにこの推測が正しいとすると、政治家に追及されるはるか以前から、自公政権の意を汲みとった名誉毀損訴訟の基準変更の準備が進められていたことになりますね。

瀬木:名誉毀損訴訟に関する先の最初の論文が掲載された『判例タイムズ』誌の5月15日号が出たのは、公明党幹事長の冬柴鐵三氏の国会質問の半月くらい前でしょう。その号に関係論文が2本載っている。すると、遅くともその3、4か月前には執筆者に執筆依頼を出しておかなければならない。法律家は一般のライターほど筆が速くはないのが普通ですからね。すると、最高裁事務総局が同誌に働きかけたのはその1、2か月前、政治家が最高裁事務総局に働きかけたのはその1、2か月前、一番短いところでも、そのくらいで考えるのが順当でしょう。まあ、常識的に考えても、2000年の秋くらいから水面下でやりとりがあった可能性はありますよね。

Q:最高裁事務総局による裁判官の思想統制が極めて〝洗練〟されており、かつ〝巧妙〟なので、こうした思想統制は部外者にはほとんど分かりません。しかし、法曹関係の専門誌とはいえ商業誌である『判例タイムズ』がそれほどの影響力を持つとは驚きました。形のうえでは裁判官が発表した自主的な論文ですよね?

瀬木:僕自身は、この5月15日号の二つの論文ほうはあまり気に留めていなくて、11月15日号の特集を見て、「変な特集だなあ」と思いましたね。すごく目立つし、変なマニュアルはついているし、その内容である算定基準も、「社会的地位」の部分なんか、きわめて非常識なことが書いてある。

御丁寧に、その年の7月から9月の東京高地裁における高額認容裁判例までくっついている。どうみても裁判官たちによる自主的な研究会の結果や論文ではなく、何か意図があって作られたものだとわかります。研究会が行われたのは司法研修所だし、出ているのも、僕の知人も含まれますが、一部のいわゆるエリート層の人々ですしね。

ただ、僕は、当時は千葉地裁にいたので、その背景まではわかりませんでした。

ところが、雑誌『選択』2014年4月号に僕への取材に基づく記事が載ったのですが、その取材のときに同誌の2011年3月号を見せてもらって、「ああ、そうだったのか」と、先の研究会や論文の背景がわかったのです。政治家の圧力、国会質問の結果であり、その背後にはおっしゃったように政治家と最高裁の水面下のやりとりもあるのでしょうね。