元エリート裁判官が衝撃の告発! 政治家の圧力に屈して名誉毀損訴訟の認定基準を変更した最高裁判所は「最低裁判所」だ! 

『ニッポンの裁判』著者 瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授
瀬木 比呂志 プロフィール

ご存じでない読者も多いと思われるため、ビジネスジャーナルの記事を要約引用しながら、当時の政治状況を説明しておきましょう。

2001年初頭、当時の森喜朗首相は度重なる失言により各メディアから猛烈な批判にさらされており、公明党も最大の支援組織である創価学会批判キャンペーンに悩まされていました。このような状況を受け自公は、01年3月~5月にかけて衆参法務委員会などで「名誉毀損裁判をどうにかしろ」と、裁判所に露骨な圧力をかけたのです。

01年3月、法務大臣の高村正彦氏(自民党)が参院法務委員会で、「マスコミの名誉毀損で泣き寝入りしている人たちがたくさんいる」と発言したのを皮切りに、同月の参院予算委員会で、故・沢たまき氏(公明党)が「名誉侵害の損害賠償額を引き上げるべきだと声を大にして申し上げたい」と、損害賠償額の引き上げを要求。魚住裕一郎氏(同)も同年5月の参院法務委員会で「損害賠償額が低すぎる」「懲罰的な損害賠償も考えられていけばいい」と発言。だめ押しをするかのように、公明党幹事長の冬柴鐵三氏が、同月の衆院法務委員会で、大々的にこの問題を取り上げて「賠償額引き上げ」を裁判所に迫ったのです。これを受けて最高裁民事局長は「名誉毀損の損害賠償額が低いという意見は承知しており、司法研修所で適切な算定も検討します」と回答するにいたります。

不可思議なことに、これと呼応するかのように、裁判所と関係の深い法律誌である『判例タイムズ』(01年5月15日号)に、「名誉毀損損害賠償請求については、500万円程度の賠償が相当」という元裁判官の論文が掲載されます。そして、発売直後の01年5月17日には、最高裁に属する司法研修所で損害賠償の実務のあり方についての研究会が行われ、その研究会の結果が同誌(01年11月15日号)に掲載されます。

『絶望の裁判所』は、司法の荒廃を告発すると同時に、日本の「部分社会」の病理を描いた社会評論の書としても優れた作品になっている

『名誉毀損による慰謝料額の定型化のための算定基準』と題されたその「資料」では、名誉毀損の損害賠償額の算定方法がマニュアル化され、賠償額算定基準のうち原告の社会的地位については、タレントは10点、国会議員・弁護士等は8点、その他は5点という設定がなされたのです。それまで、裁判所は、公職である国会議員に対する報道の名誉毀損については高額賠償を認めることは少なかったのが、一転、一般人よりも高額な賠償を認容するようになったのです。

(「与党・自公、最高裁へ圧力で言論弾圧 名誉毀損基準緩和と賠償高額化、原告を点数化も 」『ビジネスジャーナル1月29日号』「自公与党、批判封殺のため最高裁への圧力発覚 政界に激震、国会で追及へ発展か 」『ビジネスジャーナル2月8日号』を要約引用)。

さて、一連の経緯を見ると、名誉毀損訴訟の基準変更は、2001年以前から周到に仕組まれていたのかもしれませんね。国会で論戦になったちょうどそのころに名誉毀損訴訟に関する最初の御用論文がタイミングよく掲載されるというのは、単なる偶然とは考えられない。高裁事務総局と自公政権は、国会論戦前に水面下で調整を重ねていたのではないでしょうか?