トヨタの成功、ソニーの失敗、そしてアップルとグーグルの躍進。企業の成功と失敗の背景には「タレント」を生かす人材戦略があった!『『タレント」の時代』著者・酒井崇男氏インタビュー

酒井 崇男 プロフィール

だからこそ重要なのは、設計情報をつくり出す中心になるタイプのタレント人材ということになるのです。

Q 本書ではタレントになるような人材が結構いるけれど、タレントを生かす仕組みをつくるのが難しいとも書かれていますね。

酒井 結局、設計情報の創造は、人の頭の中で行われているので、外側からはわかりにくいんです。実際には設計情報を創造するためには、いろいろな分野の人を投入して、時間もある程度かけてつくりあげていかなくてはいけないのに、つくっている最中は何をしているかよくわからない。また財務諸表など数字という目に見えるものもないので、「わかる人にはわかる」という世界なんです。だから難しい。

Q そして、その失敗の典型例がソニーであったと。

酒井 ソニーという会社は本当にタレント的な優秀な人材が多く集まっている企業だったんですね。タレントを生かす仕組みも以前は企業文化として機能していた。しかし近年、「経営のプロ」がトップにつくようになってその仕組みを破壊してしまったのです。

Q 「経営のプロ」とは?

酒井 要するに、MBAで学ぶような資本の効率性などを見て経営をする人のことです。彼らは財務諸表のことは詳しいけれど、実際に価値を創造していく現場、設計情報をつくっていく段階は財務諸表には載らないので理解できない。

だから簡単にいえば「経営のプロ」は結果の数字を見てとやかく言っているけれど、肝心の情報をつくる部分、付加価値を生み出す部分の評価ができない。そうした人はえてして妙な仕組みをつくって創造活動のジャマをするものです。企業の肝となるもっとも重要な仕事を評価できない人がトップに立ったら、その企業の業績は下がって当然ですよね。

いまはグローバル競争の時代です。そうした時代にタレントを評価できる人がトップにいるかどうかは決定的に重要です。だからグローバル企業では、ライバル企業にどんな人がトップにつくのかを非常に注目しています。

私たちの仕事でも、企業のトップや開発のトップに誰がつくかでその企業の今後の方向性や業績が予測できるほどです。まさに「企業は人(=タレント)なり」です。

Q 一方で、そうしたタレントを生かす仕組みをトヨタが半世紀前からシステム化していて、しかもそのシステムを取り入れて成功しているのが、アップルやグーグルなどのシリコンバレーのIT系企業というのがおもしろいですね。

酒井 トヨタは生産方式で有名ですが、じつは開発方法もおもしろいんです。いままでことさら喧伝していなかったので、日本ではそのすごさはあまり知られていなかったのですが、これこそが価値創造を行うための「タレントを生かす仕組み」です。