トヨタの成功、ソニーの失敗、そしてアップルとグーグルの躍進。企業の成功と失敗の背景には「タレント」を生かす人材戦略があった!『『タレント」の時代』著者・酒井崇男氏インタビュー

酒井 崇男 プロフィール

一方、本書でいうタレントのような創造の中心となる人は、非定型の知識労働ということができます。新しい価値をつくり出す人。商品(=内容)でも新しい仕事のやり方(=方法)でも、それによって新しい価値をつくり出す人です。医師でもたとえばiPS細胞の山中伸弥教授のような仕事は当然非定型の知識労働になります。

もちろん一人の個人でも、定型労働をやっている時間、非定型労働をやっている時間、創造的なことをしている時間、完全にマニュアルに沿って動いている時間など、四つの象限を行ったり来たりしているはずですが、その割合の多寡でその人の仕事がどんな仕事かがわかります。

復活のキーワードは、タレントを生かす仕組みにあり!

Q 本書のタイトル『「タレント」の時代』とは、創造的な仕事をして「利益を生み出す人」「価値を生み出す人」が、企業において決定的な役割を果たすようになってきたのがいまの時代という意味ですか?

酒井 そうです。

本書では、ものつくりでもサービスでも、企業の活動は、「設計情報の創造と転写」という言葉で説明しています。たとえば製造業の場合は、開発して試作するところまでが設計情報を創造する工程であり、工場での生産活動はその情報を転写する工程です。

そしてじつは、転写工程、すなわち生産(工場)の品質が良いから消費者が買うという時代は少なくとも20年以上前に終わっています。

いまや製品でもサービスでも私たちが買っているのは、設計情報です。

アップルが自前の量産工場を持っていないのは有名な話ですが、iPhoneを世界中の人が買っているのは、その価値を欲しくて買っているのであって、中国の工場でつくられた品質が良いから買っているわけではない。つまり転写工程は海外に出しているけれど、そこで付加価値を生んでいるわけではないんですね。iPhoneが売れるのは、カリフォルニアの本社でつくられている設計情報が魅力的だと多くの人が感じているからです。

トヨタだと一般的には転写工程であるトヨタ生産方式が有名ですが、現在、実際に利益の95%を決めているのは、設計情報を創造している開発の段階です。利益もそこで「計画」されています。開発の段階でユーザーが欲しがるような魅力的なクルマかどうかが決まってくる。

いくらトヨタ生産方式がすぐれているからといって、いまやトヨタに限らず世界中の工場で、トヨタ生産方式が導入されていて生産の方法は世界中で標準化されているので、そこで差はつかない。また実際にユーザーがトヨタ車を欲しがらければ、トヨタ生産方式がどんなに優れていても意味はないですよね。トヨタ生産方式はやっていなければお話にならないというだけで、そこで勝負がついているわけではありません。

つまり企業活動自体が、製造業においても、コンテンツ産業といっていいくらい工場の手前の開発段階で勝負がついているんです。