妻の死後、27年間の不倫にけじめをつけたが…田原総一朗を襲った現実

ぼくが生涯で愛した女性について
小野 美由紀 プロフィール

8月13日。平壌での取材を追え、ホテルを発つ直前のことだった。朝、電話がかかってきた。節子が危篤状態だというのだ。田原は電話口で、力一杯、節子にエールを送った。

「生きていてくれ。どうか死なないでくれ」

亡くなったという連絡があったのは、それから3時間後だった。享年67歳。田原は、底なしの喪失感に襲われた。

 

『征服する恋愛』と『尊敬し合う恋愛』

生涯で愛した女性は2人だけ。相手に深くのめり込み、命がけで関係を構築し、それを守る田原。現代社会に生きていると、一人の人間をとことんまで愛することはとても難しいことのように思える。その秘訣はなんなのだろうか。

「べつに秘訣とか理由なんてないよ。"好き"が続くって言うことはね、基本に相手を尊敬しているってことですよ。

僕は、男には、『征服する恋愛』と、『尊敬し合う恋愛』2つのパターンがあるんじゃないかと思っている。僕は後者。お互いに、自分に無いものを持っていて認め合っているから、それをもっと密接にする意味で結婚するの。相手を尊敬できなくなったら、きっと愛は終わる。

夫婦関係でも、嘘ついたり、裏切ったりすると愛がなくなってゆきますよね。会話をしない夫婦が多いのは、しゃべってしまうと、お互いのウソがばれて、まずいからだと思う。今の若い人たちが恋愛や結婚をできないと言うのは、コミュニケーションが恐いからじゃないかな? 」

「田原は肉食系に見えるけど、あまり、愛や恋に興味がないんですよ」とは秘書を勤める、田原の長女の眞理さん。

「男も女もいろんな人に電話してるから、恋愛っていうより、しゃべりたいだけなんです」(眞理)

「セックスはね、好きか嫌いかって言われたらそんな好きじゃないでしょうね、嫌いじゃないけどね。嫌いじゃないって言うのはまた嘘で、ほんとはそんなの興味が無い。あんまり恋愛にも興味が無い。安心感があって、阿吽の呼吸でしゃべってくれればなんでもいいんだよ」(田原)

結婚は一種のシェアハウス

末子が亡くなったあと、田原は節子の娘を養女にした。現在は田原の仕事のマネジメントを娘3人で回しているが、本人曰く、この3人がじつに上手くいっているのだと言う。

「この間も、女性誌の取材でドロドロしたところはないんですか、と聞かれたんですが、全然、そんなのない(笑)。財産を取り合うなんてことになると、大変だと思うんですが、一応、田原は三等分にきっちりしてくれてるし。

私の亡くなった母も、節子さんとのことは知っていたと思うんですけれど、別に生活が壊れなければ、いいよねえ、みたいな。田原家は合理的なんですよ」(眞理)

「結婚もね、一種のシェアハウスなんですよ。非常に合理的なの。愛だとかなんだとかっていうよりも、しゃべっていて楽しくて、長く一緒にいて、お互いに別々に家があるんだったら、それぞれ住んでいたほうが、光熱費とかも浮くからいいよねっていう」(田原)

悩みを面白がり、業と生きる

27年間の不倫の恋。2度にわたる、妻の乳がんとの闘病。過酷な人生の過程を経て、目の前に座る81歳の田原は、とてもからりとして見える。しかし、本当に元々からりとした人間だったら、心中を考えるような、非合理的な不倫を27年も続けるだろうか。

煩悶の果てに膿みを出し切って枯れ尽くしたのか、それとも本当に、元来そんな人間なのだろうか?

彼の最後の言葉に、苦悶を背負いながらも颯爽と走り続ける、「田原総一朗」という人生のエッセンスがあった。

「ぼくは、悩みをおもしろがる人間。男と女の問題だけではなくて、仕事でも何でも、トラブルが起きて悩むと、面白がっちゃうんです。人間って言うのは理性があって、本能を理性が抑えたり、否定したりする。でも、やめられない。それが業。業を、面白がればいい」

(了