大阪都構想「隠された真実」を考える~なぜ市民の税金は「市外」に流用されるのか

藤井 聡 プロフィール

第一に、「大阪市の税金が市外に使われる事を防ぐ」という現在の行政の説明を保証するには、大阪市から大阪府に吸い上げられた税金(2200億円)の使い道を、現大阪市民(特別区民)が「管理」しなければならない。しかし、その2200億円の使い道を管理するのは「大阪府」なのである(協定書に明記されているように大阪府の一般会計に繰り込まれるからだ)。

もうこの時点で、2200億円の市外への流用を食い止めることが難しいことが分かる。そもそも大阪府の議会も知事も、その3割が現大阪市民の付託を受けて選ばれているが、残りの7割は大阪市民以外の府民である。したがって、知事も議会も、現大阪市民の意向「だけ」に基づいて、予算執行をすることなど不可能だ。したがって、うまくロンダリング(転用)さえすれば、おカネに色が付いていない以上は、今、大阪市民のために使われている市民の税金が、他の自治体や、「府の借金返済」に回されていく蓋然性は、すこぶる高いと言わざるを得ない。

第二に、ただしこの2200億円については「特別会計」をつくり、その使い道をチェックするとも説明されている(市議会答弁)。このチェックが完璧で、かつ、違反があった場合に強制できる権限が特別会計側にあれば、流用は避けられる。しかし、肝心の「協定書」にはその特別会計は明記されておらず、もちろんその権限も保証されていない。

第三に、万一仮にそれが保証されたとしても、その特別会計が、大阪府の一般財源という「別の財布」からの使い道を、どこまで調整できるのかといえば、実務的には絶望的に難しい。特別会計にて2200億円を大阪府がどう使ったのかを逐一チェックしていく作業は膨大なものとなり、現有の行政マンパワーを考えれば、実務的にほとんど不可能といって差し支えない。

第四に、その特別会計を司るのは、5つの特別区(つまり大阪市)と大阪府と構成される「都区協議会」である。言うまでも無く、大阪府と各区では、実質上の政治的なパワーは対等でなく、したがって、仮に特別会計をこの協議会で厳密にコントロールすることになっても、そのコントロール主体に強力なパワーを持つ大阪府の意向が強く反映されてしまうことは避けられない。

現在、行政が今、明言しているように「大阪市民の税金の流用を回避する」ためには、中には絶望的に成立不可能なものを複数含めたこれらの条件の「全て」をクリアせねばならないのだが、それは当然、「絶望的」と言える。そもそもそれらの条件はいずれも、法的拘束力のある「協定書」には書かれていないからである。結果、「市民の税金は余所には使われません」という説明は、あくまでもタテマエであって、そう断定できるような制度は整備できそうにないのが実情なのである。

穴の開いたバケツに水を注げば、水が漏れる

──いかがであろうか?

無論、判断は全て読者に任せるが、以上の議論は筆者にとっては明白であるとしか思えない。それは「穴の開いたバケツに水を注げば、水が漏れる」ようなものにしか思えないのであるのだが、いかがであろうか。

いずれにしても筆者は、都構想の投票の開催にあたり、少なくとも筆者が学者として事実だと考えるこの7つの項目については大阪市民、広く日本国民の皆様にはしっかりと吟味いただきたい、と心の底から祈念している。

そしてそれを受けて、その他の要素も総合的に加味しながら賛否の判断を下すのは、誰あろう大阪市民だ。

ただし、学者も政治家も、適正な情報を発信し続けることが不可欠であることは論を待たない。さもなければ、かつての郵政改革のように、目をつむったまま道路を横断するようなマネをすれば大怪我する他ないからである。「後悔先に立たず」、我々は今一度、この言葉をしっかりとかみしめるべきなのだ。

そしてそのためにも、「抑圧の無い自由な議論」は不可欠なのである。

謝辞:「都構想」についての議論は今、小さなネット記事ですら「抗議」の対象に晒される様な抑圧的環境の中に置かれています。そんな中、筆者に「真面目な政策論」についての言論機会を提供いただいた「現代ビジネス」に心から深謝したいと思います。ならびにそのきっかけをいただいた高橋洋一教授にも深謝の意を表します。ありがとうございました。