[ボクシング]
杉浦大介「ヘビー級人気復興の鍵を握るクリチコ、ワイルダー」

スポーツコミュニケーションズ

米国希望の星、ワイルダー

 そして、クリチコがアメリカのリングで存在感を示せるかどうかは、今後のこの国のヘビー級戦線を占う上でも重要な意味を持ってくる。
 1月17日にラスベガスで行なわれたWBC世界ヘビー級タイトル戦で、指名挑戦者だったデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)が王者バーメイン・スタイバーン(カナダ)に判定勝ち。デヴュー以来の連勝を33(32KO)に伸ばしたワイルダーは、アメリカ人としては2007年にシャノン・ブリッグスがWBO世界タイトルを失って以来のヘビー級タイトルホルダーとなった。

かつてアリ対フレージャー戦などの伝説的試合が行なわれたMSGにヘビー級タイトル戦が戻ってくる。Photo By Kotaro Ohashi

 モハメド・アリ、ジョー・フレイジャー、ジョージ・フォアマン、ジョー・ルイスといった巨星たちがファンを湧かせた時代も今は昔。タイソン、イベンダー・ホリフィールドら活躍した1990年代前半を最後に、アメリカのヘビー級は低迷期に突入していた。そんな時代に現れた29歳のパワーパンチャーに、ここで一躍、次期スーパースター候補の期待が集まり始めている。

 時を同じくして、近年はケーブルテレビ限定のコンテンツだったボクシングが3月から地上波のNBCで定期的に放送されることが1月14日に発表されたばかり。ワイルダーもこのシリーズの仕掛人となった強力アドバイザーのアル・ヘイモンの契約選手だけに、防衛戦はNBCで中継されることが有力だ。

 パワー、無敗の戦績、カリスマ性といったスターに必要な要素を備えたワイルダーが、これから先、多くのファン、視聴者が見守る前で防衛を続ければ、その名は全米に知れ渡るはず。そして、その後にクリチコとの4団体統一戦が実現すれば……。そのときには、アメリカに、さらには全世界に、真の意味でヘビー級の熱狂が戻ってくるかもしれない。

「(スタイバーン戦は)ワイルダーに勝って欲しいと願っていた。全勝全KOで進んできてほしかったのに、そうならなかったのは残念ではあった。その一方で、彼が12ラウンドを戦えることを示したのは大きかったと思う。次に誰と戦うのかは分からないが、防衛戦で印象的な形で勝ってほしい。私との試合はPPVで行なわれるファイトになるだろう」

スター性にあふれたワイルダーからしばらく目が離せない。Photo By Kotaro Ohashi

 ジェニングス戦の会見時にワイルダーについて訊かれたクリチコは、まるでプロモーターのような口調だった。“アメリカの希望の星”との近未来の対戦にも異存はない様子。米国内では実績に見合った評価がされているとは言い難い王者が、ビッグファイトを求めているのは事実に違いない。

 現時点でクリチコはHBOとの契約下だけに、ヘイモン傘下のワイルダーとはテレビ局の違いが気になるところではある。ただ、2人が勝ち続ければ、究極の対決は米国でも最大級に待望されるマッチアップになるはずだ。