魚やハチの行動研究から生まれた先進技術でロボットカーを開発
“ぶつからない車”がつくる信号のない世界

NISSAN・近未来のモビリティ 世界をよくするテクノロジー【第3回】
〝ぶつからない車”の実現に向けた技術開発の一環としてつくられた ロボットカー「EPORO」。魚と同様の行動ルールを走行制御に応用し、 通信によりお互いの状態を知ることで集団走行する。実験を繰り返し、 日産は、車同士がつながる社会システムを目指している。


 興味深い話がある。日産は、車車間通信を利用した〝ぶつからない車〞の技術開発の一環として、ロボットカー「EPORO(エポロ)」を開発している。お手本は、なんと昆虫や魚だという。

図1のエリア1は、魚同士がぶつからないように、 サッと身をかわすパーソナルスペース。エリア2に 仲間がいるときは速度を合わせ一定距離を保とうと し、エリア3に仲間がいると、遠すぎるため、近づ こうとする。この原理で車を動かすと、車の群れは 魚群のように形を変え、図2のように走行する。

「ミツバチを観察すると、それぞれに自分だけの領域『パーソナルスペース』があり、ほかの個体がそこへ入ってくるとスルッと距離を置くことがわかります。これ以上近寄られると、ミツバチの素早い反射神経でも対応できずにぶつかってしまう、という距離を知っていて、お互いにそこへは入らないのです」

 また、イワシは大きな群れをつくることで、天敵の魚に「大きな魚だ」と誤解させつつ大海原を渡っていく。このため、ぶつかってはいけないだけでなく、仲間から離れすぎてもいけない。離れると天敵に食べられてしまうからだ(図1・2参照)。

「研究の結果、彼らは体に周囲の水圧を感じるセンサーがあり、圧力の変化により仲間との距離を察知していました。これはレーザーやパルス信号により、ほかの車と適切な距離をとる〝ぶつからない車〞とまったく同じ原理です。また、個体によって特性があるんですよ。先頭を行きたがるイワシもいれば、しんがりを付いて行きたがるイワシもいます」

 二見氏らがここから得た教訓がある。同じ道路状況でも「ここで前の車を抜け!」と思うユーザーもいれば、逆に「ほかの車に抜いてほしい」と思うユーザーもいる。二見氏は

「自動運転を実現するなら、ユーザーの癖(動物でいう個体の特性)も反映しなければ、その機能を使ってくれなくなるはず」と語る。彼が、非常に含蓄のある言葉を語った。

「非常に勉強になりました。我々はほかの分野の研究成果などに興味をもち、『これは車に応用できないか』などと考え続けてきました。その結果、自然が最高のお手本だったのです」