魚やハチの行動研究から生まれた先進技術でロボットカーを開発
“ぶつからない車”がつくる信号のない世界

NISSAN・近未来のモビリティ 世界をよくするテクノロジー【第3回】

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車が通信機能をもつことにより、道路事情は一変する。日産自動車の技術者、二見徹氏が、夢の近未来を語る

 通信技術の発達は「集合知」をつくり出した。多くの人がつながることで、莫大な情報が1ヵ所に集まると、いままでにない活用法が生まれる。たとえば小売店がポイントカードなどを使い、誰が、いつ、何を買ったかなどのデータを集めれば、店は曜日や時間帯に応じて最適な品を並べることができる。そしていま、車も「結びつく」ことにより、新たなステージを迎えようとしている。日産自動車の二見徹氏が話す。

二見 徹(ふたみとおる)
日産自動車 電子技術開発本部 IT&ITS開発部 エキスパートリーダー。IT&ITSシステムおよびEV-ITシステムの企画、開発を手がける。

「たとえば電気自動車の『リーフ』です。現在、充電スタンドは各地に次々と誕生しているため、地図に反映させるには時間がかかります。しかし『リーフ』は弊社と通信でつながっているため、全国のどこで充電されたのかを把握でき、その情報は速やかにほかの『リーフ』と共有されます。また、バッテリーの残量がどれだけあればどこまで行けるのかも、本物の走行データから知ることができます。誰かの経験が、自分の経験として役立つのです」

 しかも「リーフ」は故障する前に、その兆候を車が知らせてくれる。

「弊社は24時間、『リーフ』のバッテリーの様子を見守っています。このため、電池の発火などの致命的な事故は1件も起きていません。この仕組みによって、走行距離が長いタクシーに使われている『リーフ』の電池を診断したことがあります。当初、運転手さんは『何で車をもっていくんだ?』と疑問を抱いていましたが、『未然に故障を防いでいる』と話すと『すごい時代になったものだ……』と驚いていました。将来的には電池に限らず、機械的な故障も未然に防いでいこうと思っています。これぞ、夢の技術ですよ」

車車間通信の実現で自然渋滞がなくなる

 通信技術と車の融合による進化はこれにとどまらない。車同士の通信、いわゆる車車間通信が行われると、車はぶつからなくなる。これまで急な車線変更や急停止などでぶつかっていた場面でも、車同士が通信し合っていれば、どちらかが適切な回避行動をとればよいのだ。しかも、二見氏によれば運転が根本から変わるらしい。

「たとえば2台の車が前後に並び、高速で走行していても、原理的には、車間距離はほぼゼロに近くてもOKになります。車車間通信で前後の車が情報を共有していれば、前の車がブレーキをかけると同時に、後ろの車もブレーキをかけられますからね。すると渋滞が一気に減ります。道路には、1分あたりどれだけの車を通せるかを示す『容量』という概念があります。一般的に、この『道路容量』の105%を超えると渋滞が始まりますが、車間距離が短ければ、通せる車の台数は2倍、3倍に増えます。事実上、自然渋滞はほぼなくなるはずです。そもそも、ぶつからないのですから信号さえ必要なくなるかもしれません」