宇野亞喜良 第1回
「ぼくは昔から裏でチマチマやる細かい作業が好きなんです」

島地 勝彦 プロフィール

立木 むかしの日本映画で『無法松の一生』ってあるでしょう。あれもじつによく計算された映画ですよ。フィルムをどれくらい戻すかとか、絵を暗くしておいて戻すかとか。

宇野 そういう計算をしている作品が好きですね。黒沢明なんかも映画のセットのなかを平気で歩いていっちゃうんだけど、ぜったいにカメラには映らないっていうところが凄いと思う。

立木 宇野さん、あれ観た? ソ連時代の『動くな、死ね、蘇れ!』という映画。

宇野 観ていないなあ。

立木 ぜひ探してみてください。なんていうか、モノクロがすごいきれいなのよ。

シマジ ドキュメンタリーなんですか?

立木 うん、まあ、そうでもある。シマジも観ろ。

シマジ 去年の夏に観た『グレートビューティー/追憶のローマ』というイタリア映画には感動しましたね。これは『甘い生活』の続編みたいな作品で、あの主人公が嫉妬深い女房と離婚して、小説家になって印税生活をしている。相変わらず夜は乱痴気パーティ。で、アフリカ系のユーモアある住み込みメイドと暮らしている。おれは今度生まれたらこれだなって思ったくらいです。

立木 住み込みメイドなんて、年寄りがそんな夢を持っちゃいけません。だいたいお前みたいなやつはもう生まれ変わらなくていいの。それより、宇野さんは本当に映画が好きですよね。監督なんかもやってみたかったんですか?

宇野 いや、全然。ぼくは観るのが好きなだけです。映画監督なんて無理だと思う。自分の欠点がすべて出ちゃう気がするし、細かいところまで全部自分でやりたくなるだろうし。

シマジ でも同じようなことをいま舞台でやっているじゃないですか。凄いですよね。80歳でよくそんな体力がありますね。舞台美術なんてあんな大きなものをぜんぶひとりで描いているんでしょう?

立木 だって本人は80歳だなんて思っていないんだから。

宇野 普段はあまり歳のことは考えないけど、ポルノグラフィーを見ても何も起こらない、そんなときに思い知らされますね(笑)。

シマジ またまた、ご冗談を(笑)。本当は「千一夜物語」の主人公みたいに"快楽の悪魔"が下半身に棲んでるんじゃないですか?