宇野亞喜良 第1回
「ぼくは昔から裏でチマチマやる細かい作業が好きなんです」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ タッチャンの面白いところはアシスタントの下積み経験がないところなんですよね。

立木 写真学校を卒業して、堀内誠一さんに「どこかいい就職先ないですか?」と訊いたら、「うちにくれば」と言われてアド・センターに入ったんだけど、行ってみたら上の階に中村正也さんがいたのよ。でも入ったはいいけどカメラがない。「カメラはないんですか?」と訊いたら「それは自分で買いなさい」と言われて始めたのがこの仕事で、そのままずるずる今に至るというわけ。

宇野 でも写真の原理はわかっていたんでしょう?

立木 いちおう写真の学校には行っていたんだけど、ほら、勉強なんかしていなかったし。

シマジ だけどタッチャンは実家が写真館なわけだから。

立木 おれもそこが甘かったの。おかげで何度失敗したことか。写真館と写真家はね、ぜんぜん違うのよ。いまでも苦労しているんだから。そうだな、あと5年もすれば上手くなるかもね。

宇野 去年、新宿のビームスでやっていた作品展を見に行ったけど、やっぱりタッチャンは凄い才能の持ち主だと思いましたよ。

むかし「新婦人」という雑誌で鈴木恒夫という写真家とコラボレーションして表紙を作っていたんだけど、ぼくはけっこう、ああいう裏でチマチマやる細かい作業が好きなんですよ。暗室で覆い焼きしたりね。

立木 あっ、思い出した。60年代の話ですけど、宇野さんのイラストと藤井秀樹の写真とが合体していたマックスファクターの新聞広告。おれ、もう、悔しくなっちゃってクチャクチャにしたもんね。これだったら誰が撮っても宇野さんの作品になっちゃうんじゃないかって思いましたよ。

ヒノ いまならパソコンで簡単にできるんでしょうけど、昔はそういうのもぜんぶ手作業だったんですね。

宇野 そうですね。ぼくはまったくできないんだけど、もしもパソコンをいじれたらいろいろやってみたいとは思います。とにかく、どういうわけか昔から裏の細かい作業が好きでした。バスター・キートンの映画を観て感動するのもそういうところかな。

ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』のもとにもなった『探偵学入門』という作品があるんだけど、犯人が映画のスクリーンのなかに入っていっちゃうのね。そのなかでキートンが自殺しようと紐にぶらさがると、背景がニューヨークだったり、アフリカだったり・・・。

バスター・キートンという人はカメラに自分がどう映っているのかがちゃんとわかったうえで、フィルムを引き延ばしてオーバーラップしているんですけど、そういう部分に凄く感激するんですよね。