あなたも家族も必読 認知症「最初の最初」この30兆候を知っておけば大丈夫

すぐに気付いて対処すれば、間に合う
週刊現代 プロフィール

これは、認知症になる前段階の軽度認知障害(MCI)によく見られる兆候だという。日本認知症学会の専門医でおくむらクリニック(岐阜県)院長の奥村歩医師が解説する。

「認知症の初期では、視空間認知機能が低下します。そのため、初期の段階から『回転』を必要とする動作に弱くなるんです。蓋を回して開けるのが苦手になるだけでなく、靴ひもが結べなくなる、引き戸は開けられるけどドアノブがうまく回せなくなる、ネクタイを結ぶのに時間がかかる、といった症状も出てきます」

このほか、自動販売機にうまくおカネが入れられない、道に迷いやすくなる、電話をかけるのに時間がかかる、といった兆候が出てくることもある。認知症になると、基本的には症状を自覚できなくなる。まず一緒に暮らしている家族が異変に気づくことが多いのだが、ごく早期に限れば、自分で気づくことができる。

2つのことを同時に行うことができなくなる、というのも日常生活で気づく症状の一つだ。認知症予防のための「脳リフレッシュ教室」などの活動を行う脳リハビリネットワーク代表の清水孝俊氏が言う。

「たとえば、歌いながらリズムに合わせて手を叩けない、といったことが起きます。若い頃は意識せずとも普通にできていたことが、脳の機能が低下することで、できなくなってしまうのです」

他にも、散歩しながら簡単な暗算ができない、電話をしながらメモを取るのが困難、といった同時の動作が苦手になってきたら、それは認知症のサインだ。

イライラすることが増えた

埼玉県に住む74歳の斉藤啓子さん(仮名)は、3歳年上の夫との会話の途中でこんな異変を感じた。

「会社員の息子が、中国に転勤することが決まったと聞き、夫に伝えたんです。空気も悪いし食べものなども心配で、相談したかったのですが、『そうか』と生返事しかせず、話の途中でふいに立ち上がって、自分の部屋へ行ってしまった」

こうしたことが何度か続いたので、啓子さんは夫を病院へ連れて行こうとした。

「そうしたら、『俺はどこも悪くない!』と突然怒鳴ったんです。温厚な性格で、声を荒らげることなどない人だったので、驚きました」

この夫の行動にも、初期の兆候が見られるという。『社会脳からみた認知症』(講談社ブルーバックス)の著者で、勤医協中央病院(北海道)名誉院長の伊古田俊夫医師が解説する。

「まず、大切な話をしているのに聞き流したり無視するというのは、他人に関心を持つ脳の働きが低下していると考えられます。数分であれば相手の目を見て話ができるのですが、すぐに関心が薄れてしまう。認知症の初期には、何かに取りつかれたような状態や心だけ別の世界に行ってしまったような状態が認められることがあります。