福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の危機 第2回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

もし、2号機が減圧できずに格納容器が壊れ、大量の放射性物質が外部にまき散らされたとしたら。それは取り返しのつかないことを意味した。

1986年のチェルノブイリ原発事故では、メルトダウンした核燃料によって原子炉が爆発し、大量の放射性物質が外部にまき散らされた。事故対応にあたった作業員や消防士などおよそ30人が急性放射線障害で亡くなっている。人は6000ミリシーベルト以上の放射線量を全身に浴びるとほぼ全員が死に至る。

『メルトダウン 連鎖の真相』には貴重な写真や図版、そして事故対応にあたった東京電力技術者の証言がが多数収録されている

『メルトダウン 連鎖の真相』には貴重な写真や図版、そして事故対応にあたった東京電力技術者の証言がが多数収録されている

1999年、茨城県東海村で起きたJCOの臨界事故では、35歳と40歳の男性作業員が1万ミリシーベルト以上の放射線を浴び、全身の皮膚が炎症し、内臓の機能が失われ、亡くなった。それは絶対にあってはならないことだった。

復旧班は、SR弁をなんとか開こうと考え得る限りの策を試みた。SR弁は格納容器に8つついている。最初に開かなかった弁の制御盤からバッテリーをはずして、次々と別の弁の制御盤にバッテリーを接続したり、バッテリーの配線をいったんすべてはずして、つなぎ直したりしていた。さらに電圧を上げるため、10個のバッテリーを11個に増やすことにも挑んだ。

「電磁弁に直接つなごう」

「SR弁(電磁弁に)直接バッテリーをつなぎました!」

「了解。原子炉減圧確認」

「了解。原子炉圧力……。低下を確認できません。さらに上昇傾向」

「なんで減圧できないんだ!」

じりじりと時間がすぎていった。

(第3回に続く)

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NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
「事故はなぜ起こったのか」「人類は原発を制御できるのか」。福島第一原発事故から2年が経ったにもかかわらず、いまなお多くの謎が残され、事故の検証作 業はまだ途上にある。NHKでは、原子力問題に精通した取材記者、番組制作者からなる取材班を結成し、400人以上の関係者に取材、各種事故調でも触れら れていない独自の視点で多角的に事故を検証した。本書は、NHKスペシャル『メルトダウン 福島第一原発あのとき何が』(2011年12月18日放送)、『メルトダウン 連鎖の真相』(2012年7月21日放送、第67回文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞)、『メルトダウン 原子炉「冷却」の死角』(2013年3月10日放送)で取材した関係者の証言や記録をもとに、書籍として再構成したものである。