福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の危機 第2回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
危機的な状況にあった2号機では、SR弁開放とベント弁開放のいずれを優先するかをめぐって、吉田所長(写真左)と班目春樹原子力安全委員会委員長の間で意見の相違があった 写真:NHK

吉田が回してきた班目からの電話は、すぐ近くにいた同僚が受け取った。

「もしもし、お電話かわりました……」

テレビ会議で一部始終を見聞きしていた社長の清水以下本店の幹部も、SR弁の開放よりまずはベントを優先すべきという見解に異論はなかった。格納容器から圧を抜き、高温高圧になっているサプレッションチェンバーを守ることが先決だと考えていた。

解析担当者は、安堵した。その一方で、最後は、SR弁を開いて減圧しなければならないと思っていた。ベントに成功したあとは、SR弁を開いて原子炉圧力を減圧して、水を流し込まなければならないのだ。

そもそも、こうしている間にも原子炉水位はじわじわと下がっている。

恐いのは、サプレッションチェンバーの破損だけではなかった。免震棟は、SR弁を開けたら、原子炉から高圧の水蒸気があっという間に格納容器に抜け、原子炉の水位が急激に下がることを憂慮していた。原子炉を減圧すると、中の水が沸騰して、水が一気に減る「減圧沸騰」という現象である。

主蒸気逃がし安全弁とも呼ばれるSR弁は、原子炉の冷却機能が失われた非常事態に使われる重要な機器。しかし、メルトダウンを食い止めるはず の安全装置は、メルトダウンが進むとかえって使えなくなるという、構造的な欠陥を抱えていた CG:NHKスペシャル『メルトダウンⅡ連鎖の真相』

このため、すぐに注水しないと、原子炉の燃料がむきだしになり、メルトダウンに至ってしまうのだ。

免震棟と東京本店は、ベントを午後5時に行うことを決めた。吉田が改めて確認する。

「5時ということですが、ベントラインが動作できれば、可及的速やかに5時を待たずにやるということも視野に入れてやるということでよいですか」

「それでやってください」

社長の清水が最終的なゴーサインを出した。