福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の危機 第2回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
NHKスペシャル『メルトダウン』シリーズでは、これまで5本の番組が放映され、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞するなど、内外で高く評価されてきた。2015年1月16日、約3年半にわたる同取材班の調査報道をまとめた『福島第一原発事故 7つの謎』が講談社現代新書より刊行された。事故の時系列の流れを追った同取材班による『メルトダウン 連鎖の真相』と併せ読むと、複雑な巨大事故の全体像がよく理解できる

「いまね、官邸からね、注入開始しろという電話がいっているはずなんですよ。それ言おうと思ったんだけど」

高橋は、総理官邸から所長に電話がかかるはずだと伝えようとしたのだが、すでに吉田に電話がかかっていた。吉田が、電話をいったん置いて、テレビ会議の出席者に呼びかけた。

「えっと、みなさん聞いて。本店さんも聞いてください。今、安全委員長の班目先生から電話が来まして、格納容器のベントラインを活かすよりも注水を先にすべきではないかと。要するに減圧すると水が入っていくんだから。一刻も早く水を入れるべきだというサジェスチョンが安全委員長から来たんですが……」

吉田と電話をしていたのは、原子力安全委員会の班目春樹委員長(62歳)だった。

前日の13日未明から総理大臣官邸5階に集まった海江田万里経済産業大臣や細野豪志総理大臣補佐官(39歳)らが、班目委員長とともに、しばしば吉田所長に電話をかけて、福島第一原発の状況を聞いていた。そして、時折、事故対応についても意見を言ってきていた。

今回は、班目が、すぐにSR弁を開けて2号機を減圧して注水するべきだと提案してきたのだった。吉田は、電話をつないだまま、免震棟にいる技術班に向かって聞いた。

「そのサジェスチョンに対して、安全屋さんそれでいいかしら? そういう判断で」

吉田から返答をふられた技術班の解析担当者は、すぐに答えた。

「サプレッションチェンバーの水温が130℃を超えています」

サプレッションチェンバーが高温高圧だから、SR弁を開きたくても開けないのだ。解析担当者は、この状態でSR弁を開いても、サプレッションチェンバーが高温高圧のため減圧できない恐れがあることを説明した。

吉田は、再び班目と話す。

「先生、安全屋に聞いたら、サプレッションチェンバーの水温がもう100℃を超えてるというんですよ。おそらく入らない可能性が高いと言っている。そこは、安全屋と話をさせますんで……」