福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の真相 第1回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

4号機で放射線量があがる理由がわからなかった。しかし、1分も経たないうちに、さらに次のアラームが鳴った。5人は足を止めざるを得なかった。プールの水に高い放射性物質が含まれているはずはない。しかし、原因不明の高い放射線量の中で作業はとてもできない。撤退せざるを得なかった。5人は、トラックで運んできた発電機やポンプなどの機材を建屋の脇に置き、再びトラックに乗って、免震棟に向かった。プールの水温上昇を防ぐための対策は、何一つ打てないままの撤退だった。

作業員の一人は、後の取材に「普段ではあり得ない高い線量を計測したことに衝撃を受けた。しかし、なぜ高いのか理由がさっぱりわからなかった。4号機の燃料プールを見つめてきた我々からみても思い当たる節がまったくなかった」と振り返っている。

4号機の中が高い放射線量にある理由は、重大な危機が4号機に連鎖していることを示す重要な兆しだった。しかし、この時点で、その理由について、免震棟も東京本店も誰一人として気がつく者はいなかった。

2号機消防注水の危機   3号機爆発まで約1時間

14日午前10時すぎ。2号機のタービン建屋の近くでは、東京電力と南明興産の社員たちが作業を続けていた。2号機の原子炉を冷却する消防車による注水に向けた準備作業だった。

2号機は、津波ですべての電源が失われる直前に起動したRCICと呼ばれる冷却システムによって、事故から4日目となったこの時点でも原子炉への注水が続けられていた。しかし、バッテリーがなくRCICを制御できないため、注水量が不安定になって、いつ停止してもおかしくない状態だった。このため、2号機でも、RCICが機能しなくなる前に、1号機や3号機と同様に消防車による注水に切り替える必要があったのだ。

このころ、1号機や3号機に注水するための水源が少なくなってきていた。水源は、3号機のタービン建屋海側にある逆洗弁ピットと呼ばれる貯水溝にたまっていた海水だった。汲み上げているうちに、いよいよ底をついてきたのだ。

このため、東京電力は、貯水溝から200メートルほど北にある原発の専用港から消防車のポンプによって水を汲み上げ、さらにもう1台の消防車を経由して長々と接続された消火ホースによって貯水溝に海水を注ごうとしていた。そして、その貯水溝からすでに配備されている消防車によって1号機から3号機の原子炉に注水する計画だった。

瓦礫が散乱する中、消防車による注水作業が行われた 写真:東京電力